カリブ海クルーズ、何と響きのいいフレーズだろう。真っ青な海、常夏の気候、陽気なカリビアンの人々、究極のリゾートの日々が想像できる。今回は幸運にも7泊8日のクルーズの出張を拝命した。私でいいのだろうかと自問自答したが社命なら仕方がない。思いっきり楽しんでこよう。
前日は、翌日の出航のため出発港のサンファンに泊る。プエルト・リコのオールド・サンファンはスペイン風の街並み、石畳の道路、2つの要塞に囲まれたまるでテーマパークのような街だ。世界遺産のモロ要塞。街の東側はサンクリスト要塞。その間にはサンファン大聖堂、カサブランカ、サンファンゲート等、カリブのエキスが詰まった濃い街だ。もしクルーズが中止になったとしても見合うだけのものがここにはある。
1日目、いよいよ乗船。15:00過ぎには多くの人が並んでいる。今回のクルーズ船は「カーニバル・リバティ」。11万トン、全長290m、定員2976名の巨大客船だ。何時間もかけて途切れなく人が吸収されていく。夕食後、21:00から早速屋上の甲板でオープニングパーティが始まる。皆ノリノリである。はたしてこのノリノリに、この年寄りがついていけるか心配だ。でも日本にも「踊りゃなそんそん」と言う言葉がある。気遅れせず頑張っていこう。夜、22:00にいよいよ出航だ。
2日目朝、第一の目的地「セントトーマス島」に到着。09:00から島内観光のオプショナルツアーに参加。以降、島に到着の度にオプショナルツアーに参加するが、時間的にも費用的にもツアーに参加したほうが効率的だ。セントトーマスはアメリカ領バージン諸島の一つ。先ずは島が一望できるビーコンポイントへ。一面に広がる海の景色は絵葉書のようだ。りっぱなお土産屋があるのはタックス・ヘブン(免税)なのだから当然なのかもしれない。次はビュー・ポイントへ。眼下に我々の船「カーニバル・リバティ」がその雄姿を見せている。島の北側(太平洋側)からは、高級別荘やゴルフコースが見える。お金持ちにはまさに天国だ。町の中心はシャーロット・マアリ。ビーチに沿って沢山の店が並んでいる。買い物天国だ。停泊港の近くにも、ヘブンサイトモールがあり、乗船客には便利だ。
3日目は、次の寄港地のバルバドス島へは1日以上かかるため船上で完全フリー。とは言っても心配ご無用。すること満載なのである。大小いくつものプール、ジャグジープール、ミニゴルフ、ジョギングコート、バスケットボール、バレーボールコート、卓球と何でも揃っている。日中にはイベントで「男性のセクシー度コンテスト(肥満度?)」もあり、セクシーダンスやセクシーシャワーの様子で観客は大いに盛り上がっていた。やはり日本人はアメリカ人には勝てないかも。夜は、毎日本格的なショーがある。ビッグバンドの演奏、著名なシンガーのものまねショー、ロックショー、ラスベガスショー等。メインロビーでの15:00から深夜までライブをはじめ、5階のカジノフロアーのライブバンド、ピアノの弾き語り等、自分の好みに合わせて選べばいい。とは言っても、クルーズの醍醐味はビーチチェアーに横になり、海を眺めながらのんびりすることだろう。ゆっくり本でも読むのが最も贅沢な過ごし方かもしれない。普段できないことをすることが極楽の過ごし方かもしれない。私の場合は、好きな読書と、オーストラリア出身のカントリーシンガー「ポール」にはまったことである。琵琶湖のミシシッピ号でライブをしていたこともあり、日本通の彼の歌は素朴で元気をくれる。「いとしのエリー」の英語バージョンを私のために歌ってくれるのだから超感激だ。
4日目は08:00にバルバドス島に到着。コーストパラダイスツアーに参加。この島はビーチももちろんいいが、何といってもブリッジタウンがいい。元イギリス領だけにイギリス風の街並みが色濃く残っている。チェンバレン橋を中心に街は広がっていくが、歩く人を意識しなければ、まるでイギリスの街を歩いている錯覚に陥る。今は博物館になっている元「国会議事堂」、「セントメリー教会」、「オールドタウンホール」を見ていると本当にここがどこか疑ってしまう。カリブ海に面した西海岸には高級別荘地が建ち並び、太平洋に面した東海岸は波が高くうねっている。
5日目はバルバドス島から少し戻って「セントルシア島」へ。ツアー最初のポイントは「セント・マークス家」。白亜の豪邸で見晴らしのいい場所に建っている。いかにお金持ちだったか偲ばれる。次はバティックハウス。インドネシアから技術が輸入され、今では島の主要な産業になっている。色がカラフルで欧米人には好まれるかもしれない。次はカリブ海で一番きれいとガイドが豪語しているマリゴット・ベイへ。海はどこの海も遜色ないが、なるほどここの湾は小さく可愛らしい。高価なヨットが数多く停泊し、人気の高さが伺える。こじんまりした湾と飛行機の滑走路、周りの景色とのバランスがいいのが理由の一つだろう。仕上げはラム酒工場で一杯飲んで、気分はすっかりカリビアン。
6日目は「セントキッツ島」。この島の見所は何といっても「プリム・ストーン要塞」。規模も大きい。海賊や他国からの侵略に備えて大砲が沢山装備されている。戦いのための要塞が、今は観光の役に立っているいるとは皮肉な話だ。ロミー・マノマーは昔のプランテーションの名残り。巨大な富が一握りに人に集中していた。もう一つのハイライトは、右がカリブ海、左は大西洋のクリフ・ポイントだ。観光名所だけに猿回しやらロバのりがいたが、ちょいとカリブのイケメンと記念撮影などしてみた。
7日目は最後の島「セントマーチン」。2つの国が同じ島にあるという変わった島で、島の下側はオランダサイドでカリブ海に面している。フィリップス・バーグは中心の町で、沢山の店・レストランが並び、クルーズから下船した客でにぎわっている。フランス側の中心の町は「マリゴ」。どことなくフランスの香りがするおしゃれな町だ。セントルイス砦は今はすっかり古びてしまってほとんど形を残していないが、美しいマリゴの町を眺めるには絶好の場所だ。この島は飛行機が真上を飛ぶマホベイビーチでも有名だ。
今夜はクルーズ最後の晩だがサプライズが待っていた。夕食後シェフの挨拶が終わると同時に、ホールのスタッフたちが一斉に踊り始めた。階段で、テーブルの周りで、お客を囲んで、なつかしの名曲「悲しみのジェットプレーン」に合わせて踊りまくる。友達になった、ドラもマイケルもローランドも一緒だ。お客とスタッフの心が完全に一つになった瞬間だ。
夜のショーも最後のショーだけに大いに盛りあがった。プロのシンガーだけでなく、クルーズスタッフがプレスリーやマドンナやフランクシナトラ等に扮し、ショーの後はロビーでお客と記念撮影と最後の晩にふさわしいエンディングになった。最後はもちろん友達の「ポール」のデスペラードを聞きながら名残尽きない感に浸った。
8日目、いよいよ下船の日だ。最初は退屈を持て余し、一体どうなるかと心配したが全くの杞憂に終わった。数々の毎日のプログラム、オプショナルツアー、アクティビティー、そして何もしないでもいい時間が存在すること。あと3~4日は欲しいところだ。忙しい現代人には是非ともおすすめだ。ただ、びっくりしたのは、アメリカ・中米の人たちはよく食べる。3時のおやつがハンバーガーだったり、ピザだったり。モンゴリアンバーベキューにはどんな時間も長蛇の列だ。ブッフェにはどの時間も人だかり。私もソフトクリームの誘惑には2回負けたけど、引っ切り無しに人が来る。これでは体の大きいのも合点がいく。アメリカンフットボールの選手か相撲取り級の人が本当に多い。日本人は超スリムに見えること間違いなし。ただ、油断していると段々彼らに近づくかもしれない。今回はカーニバル・リバティの気取らない、温かい、飽きさせない旺盛なサービス精神意に感謝。外人の多くが、率先して参加して、自分で楽しみを作っていく、そんな前向きな態度にある意味、見習う必要があると実感した。最後に一言、出発前に買った海水パンツは次回のクルーズの時には絶対使うぞ!
スタッフおすすめ
○カーニバル・リバティ ★★★★★
充実した施設と気取らない、温かい、飽きさせないサービスにあふれたクルーズ
○プエルト・リコ オールド・サンファン ★★★★★
スペイン風の街並み、石畳の道路、2つの要塞に囲まれたまるでテーマパークのような街
○セントルシア ★★★★
この島のマリゴット・ベイはカリブ海で一番きれいと評判。小さく可愛らしい湾には高
価なヨットが数多く停泊している。
○セントマーチン ★★★★
2つの国が同じ島にあるという変わった島で、島の下側はオランダサイドでカリブ海に面
し、上側のフランス側のマリゴはおしゃれな町だ。この島は飛行機が真上を飛ぶマホベ
イビーチでも有名。
2016年1月
本山泰久