2015年3月18日、チュニスのバルドー美術館で外国人観光客が襲撃され、日本人も犠牲になる事件が起きました。少し前にもイスラム国の事件があったばかりで、テレビのニュースではひっきりなしに怪我をした日本人のインタビューが流されました。
この数日後、チュニジアに発つ予定の私は、動向を見つつ現地旅行社に現地の状況を確認しました。
どうやら現地では特別、普段と状況が違うわけでもないようです。
日本でも、都内で殺人事件が起きたとして、翌日誰も外を出歩かないなんてことはないですからね。
周囲には反対する人や心配してくれる人もいましたが、すごく楽しみにしていたのに、今からやめるなんて悔しすぎるので、当然成田に向かい、飛行機を乗り継いでチュニス空港へ。
チュニスの空港についてみれば、外国人観光客がこそこそしているなんてこともありません。
空港からスースへ車で1時間ちょっと、あいにくの空模様なので、観光は翌日に。「サヘルの真珠」とも呼ばれる世界遺産の街スース、ホテルからも見える白砂のビーチが広がっています。
翌日は朝からスースの旧市街へ。カラフルなラクダがかわいい。
アラブ人の侵攻の前線基地として建てられたリバトの塔に昇ると、グランドモスクから旧市街の町並み、港の方までぐるっと見渡すことができます。眺めが良いのでおすすめです。
リバトの塔を出たところでチュニジアに来て初めて、銃を持った人を見かけました。もちろんテロ集団ではなくて警備の方です。ただ、私にはこの人たちが活躍すべき事態が起こるとも思えず、朝の旧市街はまだ始まったばかりで、もっとのほほんとした場所でした。
生鮮市場には野菜や魚、お肉に並んで牛の頭も。スースの旧市街はとても広いので、丸一日見ていても飽きないですね。
近郊のエル・ジェムには巨大なコロッセウムが。小さな町にかなりの存在感で、綺麗に残っています。
この辺りのスファックスのエリアは、オリーブの生産が盛んで、ずらりとオリーブの木が植えられています。
車を走らせるうちにオリーブも段々と見えなくなり、岩山が増えてきて、先住民であるベルベル人が住んでいるマトマタへ。地面に穴をあけ、いくつもの部屋を作って住居にしています。夏は涼しく、冬は暖かい住みやすさがあるそうです。
マトマタを訪れる観光客の目的の多くはここ、映画「スター・ウォーズ」の撮影に使われた穴居住宅です。ダースベイダーがお出迎え。
撮影当時の写真や記事が貼られています。チュニジアには他にもスター・ウォーズのロケ地がいくつもあるので、あちこち周ってみたくなります。
涼しい穴居住宅で食べるチュニジア料理。ブリックはカリカリの皮でふわふわの卵を包んだ揚げ物で、たまらない美味しさ!
特にこの辺りは他の観光客とすれ違う事も多かったですが、特に欧米の方にはたくさん会いました。あの事件の報道があったのは日本だけだったのかなと思ってしまう程です。
どんどん砂漠の奥へ進んで、サハラ砂漠の中のテントロッジ、ヤディス・クサールギレンへ。
砂漠のテントなのに、エアコンもシャワーもあって、ちゃんとお湯まで使えます。プールやスパでゆっくりするも良し、バギーで砂漠へ繰り出すも良し。
ただ、バギーがこんなにスリリングなものだったなんて、予想していませんでした。砂漠の高低差にあわせて、まるでジェットコースターのような動き。慣れてくるとどこまでも続く赤い砂漠の景色を見ながら、風を感じて抜群の爽快感を楽しめます。
驚くほど細かいさらさらの砂で遊んだり、夕陽を眺めたり…夕食の後は一面に広がる星空を見に行きましょう。
次はまさに砂漠のオアシスのイメージにぴったりの町ドゥーズ。町のすぐ近くに砂漠が広がっていて、ラクダに乗って砂丘の中へと出かけられます。
高さ2メートルはあるラクダの上から、砂漠を眺めて小一時間のお散歩へ。一面の砂漠に、雲の影が流れるのがなんとも綺麗。ラクダはつぶらな瞳で、連れて帰りたくなる程かわいかったです。
ショット・エル・ジェリドという塩湖を渡ってトズールの街へ。
赤茶色の湖なのですが、天気が良いと、空が写って湖から天まで青空が広がっているようにも見えます。
トズールは日干しレンガでできた家が並び、細い路地にはこんな複雑な模様で飾られたお家がたくさん。
時々目が回りそうになりますが、不思議な空間です。
また、トズールは北アフリカ最大とも言われるデーツ(ナツメヤシ)の産地で、ここで採れる高級ナツメヤシは「光の指」と呼ばれています。個人的にはこのネーミングはどうかなと思うのですが・・・
トズールから車でちょっと離れるだけで、大自然の景色が現れます。周辺には岩山の隙間にあるシェピカや、山道の途中に現れるタメルザ、断崖の上に残るミデスといった山岳オアシスの村も見所です。
シェピカの町はお土産屋さんの向こう側まで行くと、ハイキングコースがあり、岩山の隙間にどんどん入っていくことができます。
上の方にのぼると見晴がよく、パノラマの景色が広がります。
地元の人も割と観光に来るようで、チュニジア人のファミリーと話しながら歩きました。
奥まで進むと意外と草木も多く、泉があって湧水がわいています。
この辺りは50年ほど前に大洪水があり、その影響でタメルザの町などは廃村となっています。今では近くに新しいタメルザの町ができ、町の近くにグランド・カスカドと呼ばれる滝があります。
さらにタメルザから少しのところにミデスという村があり、ここも村自体は洪水で廃墟となっていますが、チュニジアのグランドキャニオンとも言われる断崖絶壁があります。岩山の表面に何重にもなった地層が見え、うねうねした岩山の隙間は深い谷になっています。
この独特の景色は映画にもよく使われるそうです。
そして、今回の旅で訪れたもう一つのスター・ウォーズのロケ地、オング・エル・ジャメル。波のように凹凸のある砂漠の中を進んでいくと、その景色に溶け込んだ撮影のセットが残されているのが見えてきます。ドーム状だったり台形だったりするいくつもの建造物が残り、アナキンの暮らした町を体験できます。
このセットの先に砂漠が小高く盛り上がっていることころがあり、砂漠に沈む見事な夕日を臨むスポットになっています。
ラクダ岩・・・ラクダが見えますでしょうか?
それぞれの土地で異なる砂漠や山々、オアシスの緑など、日本では体験できないような自然に触れられるのもチュニジアの魅力です。
最後の宿泊はあの事件の起きたチュニスです。何かのフォーラムが開かれているそうで、街は人であふれていました。日本人のグループにも遭遇し、特に事件もなく、普通に首都らしい街でした。
最終日はまず世界遺産カルタゴ遺跡を見てまわりました。街中に点在する遺跡のなかでも、アントニヌスの共同浴場は地中海に面してかなりの面積を有していますが、本来は2階建てで相当の規模だったことが窺えます。
100以上の部屋が左右対称に並び、それぞれが鮮やかなモザイクや彫刻で装飾され、その上にいくつものドームの天井が並んでいたのでしょう。どれだけ贅沢な建造物だったのかと、想像することしかできないのがはがゆい気持ちになります。
綺麗なお花畑が広がっているところも多いです。
最後にシティ・ブ・サイドに立ち寄り、白にチュニジアンブルーの町並みを満喫しました。
シティ・ブ・サイドは特にそうですが、チュニジアでは他の町でもドアや窓の模様がかわいい家がとても多く、町歩きや移動中の車窓からもたくさんの模様のお家をみることができます。
広大な砂漠に、様々な民族の歴史が織り混ざったチュニジア、大興奮で楽しいだけでなくとても興味深い旅になりました。
広大な砂漠に、様々な民族の歴史が織り混ざったチュニジア、大興奮で楽しいだけでなくとても興味深かったです。
砂漠ばかりかと思っていたら、予想外に様々な景色をみられて、人もこんなにいいところなのにテロが起きるなんて悲しいですが。ただ現地に来てみれば身の危険を感じることもなく、いつも通りの注意でも十分だったと思う程。一般的には中東は危ないというイメージもありますが、そのイメージだけで体験しないなんて、私としては「こんなに楽しいのにもったいない!」の言葉に尽きます。多くの人にチュニジアをおすすめしたくなる旅行になりました。
オススメ度
スース ★★★★★・・・白い家々に白砂のビーチ、色々楽しめる街
クサール・ギレン ★★★★★・・・きめ細かい赤の砂漠で非日常の世界
トズール ★★★★★・・・幾何学模様の並ぶ、砂漠のオアシス
チュニス ★★★★★・・・アラブと西洋の混在するチュニジアの中心
(2015年3月 増田里沙)
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