世界で唯一分断された首都をもつ地中海、伝説の島 キプロスを訪れて

世界で唯一分断された首都をもつ地中海、伝説の島 キプロスを訪れて

ペトラ・トゥ・ロミウ海岸

キプロス代表料理「ハルミチーズとトマトのカプレーゼ」

キプロスの町並み(南キプロス)

伝統の蒸し料理「クレフティコ」通称“盗人料理”

聖ラザロ教会

地中海の島国、キプロスという国をご存じだろうか。日本人にはまだまだ馴染みのない国の1つですが、欧州屈指の観光・リゾート地で、美と愛の女神・ヴィーナス(アフロディーテ)が誕生したとされる海岸や、女人禁制の修道院がそびえる山岳地帯など、様々な景観を楽しむことができる美しい島だ。だが、1974年の内戦以降、ギリシャ系とトルコ系の対立が続き、首都レフコシアには南北の分断線が走る。そんな歴史に翻弄され続けている国を訪問する機会を得ましたので以下に一部紹介したい。


世界で唯一分断された首都ニコシアを歩く
キプロスは元は一つの国でしたが現在は南北に分断され、南は主にギリシャ系のキリスト教徒が住む。北側の住民はほとんどがトルコ系のイスラム教徒です。両者を隔てるのは、コンクリートの壁や鉄条網に囲まれ、国連平和維持軍が駐留する緩衝地帯「グリーンライン」。180キロにわたって東西に走り、南北双方が首都とするニコシアのど真ん中を通る。だが、90年代までは武力衝突もあった状況はすっかり変わり、近年は緊張緩和が進む。2008年の4月には首都の目抜き通り「レドラ通り」の封鎖が解除され、南北の間を歩いて渡れるようになった。それ以来、このグリーンラインを往来するのがキプロス観光客の目的の1つとなっています。

検問所と城壁を示すニコシアの地図(南キプロス)

南のキプロス共和国に空路で入り、ニコシア中心部へ。旧市街は、500年の歴史を刻む円形の城壁に取り囲まれている。城壁からは11個のとりでがスペード型に突き出している。周囲は約4.5キロ。南側で無料で配られている地図を見ると、境界の北側は空白だ。「1974年からトルコの支配下にある」と書かれている。旧市街のメイン通りリドラス通りを徒歩で北上し、クロスポイントを目指す。途中ツーリスト向けのカフェなども並ぶ。ケンタッキー、マックマクド、スタバなど、日本でもよく見るチェーンも並んでいます。
観光客が目立つ。徒歩数分でクロスポイントへ。

レドラ通り(南キプロス)

レドラ通り(南キプロス)

キプロスビール「ケオ」の看板

クロスポイント(南キプロス)

さあ、いよいよ検問所です。恐る恐る手続きに向かいます。ゲートは想像よりかなりこじんまりしていて、その間近までお店が並んでいるせいもあってか、「えっ、ホントにここが検問所?」というような雰囲気です。普通にビニールの買い物袋だけを下げた人が行き来している。「ゲートはこっちだよ」と促すような係官の視線を感じ、その前に立ちます。

検問所(北キプロス)

「北キプロス・トルコ共和国」はトルコしか承認していないという事情のせいか、南側から「北キプロス・トルコ共和国」に行くとき、南側からは出国手続のようなものはなく、グリーンラインを超えた北側には入国手続が必要。わら半紙のような出入国カードに名前を書いて、パスポートと一緒に提出すると、紙にはんこを押して返してくれる。パスポート自体に「北キプロス・トルコ共和国」の入国のはんこがあるとややこしいと言うことらしい。「入国」するとすぐに男性1人が中に入っている小さな観光案内ブースがあって、北キプロスの観光地図をもらえる。思ったよりのんびりした雰囲気。
グリーンラインを超えたところは小さな広場になっていて、そこから露店が並ぶ商店街となっている。
南側と全く雰囲気が違う。違いに唖然としてキョロキョロしていたら、近くの店から出てきた男性が声をかけてくれ、道を教えてくれた。街にはトルコ語の看板が並んでいて、まるっきりトルコの街、という雰囲気。ビールの看板も、キプロスビール「ケオ」からトルコビール「エフェス」に代わる。1974年にトルコ軍が占領したと言うことで、もう30年以上経っていると言うことか。通貨はトルコ・リラのようだが、ユーロの表記も多い。意外に観光客らしき人が多い。

トルコ名物「スミット」の屋台(北キプロス)

トルコビール「エフェス」の看板(北キプロス)

セリミエ・ジャーミィ(北キプロス)

文化センター(刑務所跡)

クロスロード付近の町並み(北キプロス)

プユクハマム(公衆浴場)

道中で立ち寄ったセリミエ・ジャーミィ。14世紀にキリスト教会として完成したもので須賀、オスマントルコ占領以降、モスクになりました。この旅ではよく出くわす歴史を、踏んで来た施設の一つです。
全体に白が印象的な内装に、メッカの方角を示すミフラーブのカラフルさが映えています。もしかしたら、その視覚効果も意識して白く塗られたのかもしれません。そう思わせるくらいの白でした。
南側に戻るときは「出国手続」でまた紙にスタンプではんこを押してもらい、グリーンラインを超えて、今度はキプロス共和国側の警察が待っている。警察官にパスポートを見せると、ラルナカで入国したスタンプがなかなか見つからず一瞬険悪な雰囲気になったが、パスポートのスタンプが押してあるページを示し事なきを得ました。
ラルナカで入国したときに押されたスタンプは非常にわかりにくく、押されたときに位置を確認しておいて良かった。
ちなみに最初に南に入っているのでパスポートと入国カードを提示すれば何度でも出入りでき、カードにその都度スタンプが押されていく。ここを越えて再び南に入りツアーは終了となる。
この先この国はドイツのように南北1つになることがあるのだろうか、なぜなかなか1つになれないのだろうか。
そんなことを考えながらのグリーンライン通過体験は感慨深いものとなりました。
キプロスの見どころ
キプロスは日本の四国の半分程の島国ですが、およそ1万年前の集落から古代ギリシャ神殿、ローマ劇場、ビザンチンのモザイク、十字軍の城、中世キリスト教のフレスコ画、中世ゴシックの教会まで、そしてヴェネツィアの要塞からオスマントルコのモスクまで、見どころがギッシリと詰まっています。
今後キプロスを訪問する方におすすめしたい場所は以下の2つです
パフォスのモザイク
キプロスでみた世界遺産の中で個人的には絶対的1位を飾るのがこのパフォスのモザイクです。
キプロス島の南西部にあるパフォスは、紀元前2世紀から紀元後4世紀にかけて、キプロスの首都として栄えた碧い海に囲まれた古都パフォスには、様々な館がありそこで綺麗なモザイクを見学することができるのだ。

ディオニソスの館のモザイク

BC4世紀のモザイク
シスベとピラモスはロミオとジュリエットの原題ともいわれているほど内容が似ている作品

テセウスの館のモザイク

ローマ地方総督の館。部屋数が100を超える立派なもの

テセウスの館のモザイク

1983年に発見されたエオンの館

美しい人物画の描かれたモザイクは地中海を代表するもの
遺跡全体としては、ナポリのポンペイやトルコのエフェスのほうが見ごたえはありますが、残されたモザイクは本当にすばらしく必見です。
美と愛の女神アフロディーテが降り立った伝説の海岸でハート形の石を探そう!

ペトラ・トゥ・ロミウ海岸(リマソル)

ペトラ・トゥ・ロミウ海岸(リマソル)

ハートのペンダントはさすがに加工品(リマソル)

リマソルからパフォスへ向かう途中に、岩が海に突き出ていて、海の色が際立って済んでいる場所がある。ここが美と愛の女神アフロディーテ(ビーナス)が降り立ったと伝わるペトラ・トゥ・ロミウ海岸です。「ビーナス誕生」といえば、以前にフィレンツェのウフィッツィ美術館にあるボッティチェリ作の大きな絵画を思い出しますが、そのビーナスが海の泡から生まれたとする場所がキプロスのこの海岸だという。高台から海岸を眺める。青い空に、透き通った青い海が美しい。この日は快晴でアフロディア(ビーナス)が海の泡から誕生したとされる透き通った海は、海水浴を楽しむ人でいっぱいでした。海岸に近づいてみると、砂浜ではなく、石の海岸。小さな石の海岸で、なによりも水に透明感があり、美しい。なにをしているか観察していると、水際を歩きながら、きれいな石を探している様子。実はこの海岸は、アフロディーテを崇拝する人々の聖地となっていて、この浜辺にあるハートの形をした石を見つけると恋愛運UPと言われており、多くの観光客がここでハートの形の石を探しているのだ。また、近隣にあるアフロディーテ神殿跡にある黒い巨石もアフロディーテの石といわれ、子供に恵まれない女性が願をかけに来る聖地となっている。キプロスを訪れたら是非この海岸を訪れ幸運をGETしてみては。

アフロディーテの石に願掛け?(パフォス)

パフォス城にて

グリーンライン ★★★★★
世界で唯一の分断首都の通過は要体験!
パフォスのモザイク ★★★★★
残されたモザイクは本当にすばらしく必見
ペトラ・トゥ・ロミウ海岸(ビーナス生誕の地)★★★★★
キプロスを訪れたら外せない愛と美の聖地
2014.6月 渡邊
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