光村図書出版、小学校2年生の国語の教科書に「スーホの白い馬」という物語が採録されている。
今回、モンゴルへ行くことが決まって、一番に思い浮かべたのはこの物語だった。モンゴルの少年スーホと彼の美しい白馬の馬頭琴の由来にまつわる悲しい物語。小学生のころ、なぜかこの物語が好きだった。
ところが。調べたところ、内モンゴルのお話らしくモンゴルでの知名度は全く低いとのこと。あれ?
モンゴルの有名なお話に違いないなどと勘違いしていた私は、「えー!!ちょっと小学生のころからの憧れをどうしてくれんねーん!?」なんて思いながら出発したが、幸いにもその物語のイメージを壊されることはなかった。
ずっと先まで果てしなく続く草原と、ただただ広い空。
ぽつんぽつんと点在するゲルと、馬に乗って駆ける遊牧民の子ども。羊や馬の群れ。星空。
そして、草原に突如現れる都会:ウランバートル。
そんなモンゴルへ行って参りました。
今回モンゴルにて、ウランバートル、ゴビモン、テレルジ、ブルド、カラコルム、ウンドゥルシレットを旅してきたが、その中からいくつかピックアップしたいと思います。
<ウランバートル>
高層ビルやマンション、アパートなどが次々と建てられている。草原に突如現れる都会、そんな印象を受けた。
「電車がないから、みんな車で移動しているから、だから渋滞がひどいね。」そうガイドさんは話していた。いや確かに渋滞もすごいけども、それよりも。とにかく運転がすごい。車線変更の大胆さがすごい。しかも彼らは反対車線がすいていれば迷うことなく反対車線を走りだす。そして、対向車がくれば元の車線へ一斉に割り込む。チキン・ドライバーの私なら、きっとクラクションの嵐に遭うことだろう。
「ザイサン・トルゴイ」「ボグドハーン宮殿博物館」「ガンダン寺院」「スフバートル広場」などを観光したが、最も心に残ったのは、このモンゴル人ドライバーたちの運転技術だった。すごい。
<ゴビモンツーリストキャンプ>
ウランバートル近郊のゲルに滞在するツアーで、主に利用しているのがこのツーリストキャンプ。
レストランとテラス、トイレ、シャワーのある建物の周りにゲルが配置されている。ゲルには、ベッド、テーブル、ストーブ、電気が用意されていて、居心地もよい。シャワーもきちんとお湯がでるし、トイレも大丈夫。また、夜寒いときはストーブを焚いてくれる。観光客に大変親切なキャンプだ。
周りは見渡す限り草原。「ああモンゴルにきたなー!!」という気分になる。30分ほど歩いてみたが、全然景色が変わらなくて驚いた。だだっ広いってすごい。どーんと広がるその風景をしばらく眺め、歩いた。なんだか壮大なお散歩のように思えた(実際は30分しか歩いていない)。
また、乗馬体験も可能。ご近所の遊牧民の方が馬を貸してくれる。ここで私も乗馬に初挑戦。「はじめて馬に乗ったのがモンゴル」だなんて、なんて贅沢!はじめての体験だったが、草原の民の説明はとてもシンプルだった。
はい乗って、はいこれ(手綱)持って、はい行くよー。はいはいはーい。
家畜の群れに遭遇したり、馬に乗り颯爽と走る遊牧民の女の子をみかけたりしながら、ゆっくり1時間ほど馬に乗らせていただいた。モンゴルの馬は小柄らしい。馬に乗ったことのないわたしには小柄なんだかなんだかよく分からないけれども、優しい目が印象的だった。
<カラコルム>
かつてモンゴル帝国の首都がおかれた町カラコルム。そこは現在、大草原の中にたたずむ都市遺跡となっている。
2011年に開館した博物館へ出かけた。
日本のJICAの援助で建設されたこの博物館では、カラコルムの歴史について学ぶことができる。展示に日本語が使われているので分かりやすいし、博物館には日本人のスタッフの方が2名駐在されている。こうして、遠い地で頑張る日本人に会うととても嬉しくなってしまう。少しお話させていただき、また博物館を案内してもらった。歴史に疎い私だが、丁寧な説明と展示物のおかげで、エルデニゾー観光の前に少し知識をつけることができた。
皆様に是非、見学をオススメしたい博物館です。
博物館で心に残った石碑があった。
カラコルムは、1235年チンギスハーンの息子オゴタイハーンによって建都され、東西交易の中心地として栄えたという。この都は仏教だけではなく、イスラム教やキリスト教などの宗教が共存し、モンゴル民族以外にも、フランス人やドイツ人など複数の民族が同居する国際都市として繁栄していたらしい。
その石碑には、ムスリムの方からのモスクの建設許可へのお礼が刻まれている。そして、その裏側には仏教徒から、イスラム教の繁栄を願うお経が返事として刻まれているのだ。お互いの大切なものをお互いが大切にできる、そんな優しい国際都市であったことが窺えた。素敵。
世界遺産エルデニゾーを見学したのち、朝青龍の親族が経営する「ドリームランド」も見学させていただいた。
カラコルムは朝青龍の父の故郷なのだそう。彼の写真が所狭しと飾られるレストランや、エアコン完備のデラックスゲルなど他のツーリストキャンプとは異なる。朝青龍の栄光にどっぷりと浸れる、ファンじゃなくても非常におもしろいリゾートだった。
<遊牧民のみなさま>
今回の旅行では、遊牧民のみなさまにお世話になった。おうちへお邪魔したり、働く様子を見学させてもらったり、乗馬も体験することができた。最後にはホームステイも経験。言葉は全く通じないけれども、優しくて凛々しい彼らとの交流は心に残る思い出になること間違いなし。
家庭訪問と乗馬を体験させていただいたこちらの家族はナーダムと呼ばれる大きなモンゴルのお祭りで行われる競馬の準備で大忙しだった。モンゴルの競馬の大きな特徴は騎手が子ども(6~12歳)であること。馬の負担を減らし、より速く走られるよう、体重が軽い少年少女が馬に乗って駆ける。食事やトレーニングなどによって、馬の準備を整え、鍛えてゆく。
最近のゲルには、発電のための太陽光パネルとテレビのアンテナが整備され、夜には電気が灯るし子供も大人もテレビを楽しむ。馬に乗る時もあるけれど、便利なバイクで草原を疾走するときもある。便利な世の中になってゆく、その中でも伝統的な遊牧民の暮らしは消えてゆかない。
ホームステイでお世話になった家族には、かわいい男の子がいた。しかしまったく英語は通じず。無言でともにライオンキング(モンゴル語Ver.)を鑑賞し、散歩にでかけ、かくれんぼした。突然現れた日本からの客に、ちょっぴり恥ずかしそうだったが一緒に過ごしてくれた。そして慣れてきたころ、唯一知っていたのであろう英語を披露してくれた:「I love you」、もうお姉さんはキュンキュンです。たぶん意味分かってなくて言ってるんやろうけれども、どうもありがとう!!きみ、おおきなったら絶対に男前なるで!
最後の3日間はゲルの都合やホームステイのなんやでシャワーなしで過ごしたせいか小汚いまま空港に到着した。心なしか、自分がくさい。女子として一体どうなのかはさておき、小学生の頃からの憧れの地:モンゴルの草原や大空を存分に楽しむことができた。出会った温かなモンゴルの皆様、ありがとうございました。
2013年6月 増井
このエリアへのツアーはこちら