各地によって人々や町の印象が全く違うインド。湖に囲まれ昔の植民地時代の影響でヨーロッパ風の建築物が残るコーチンと、南インドののどかな景色が広がる田舎町アレッピーを旅してきました。
朝早い便でデリーを出発したけれど、コーチンに到着したのは13時すぎ。コーチンの空港を出ると汗臭さを感じた。デリーの気候とまったく違い32度、天気も良く真夏だった。コーチンに到着して間もなく、車で2時間かけ、アレッピーのホームステイ先へ移動。同じような道がずっと続き、気が付けば回りの景色も少し変わってでこぼこ道へ入った。20分ほどでこぼこ道を行き、なんと行き止まり。ホームステイ先であるEmerald Isleへは、川を渡らなければ行けないとのこと、ボート乗り場には5~6人乗りの手漕ぎボートと一緒に1人の船頭さんが待っている。船頭さんにスーツケースを預け、ボートに乗り込むとゆっくりと出発した。5~7分程度だが、インドについてはじめてのボートライド、風を感じながらゆっくりと進む。何の音も聞こえない、ただボートを漕ぐ音と風の音だけで心地よかった。
対岸に着くと、Emerald Isleのスタッフ・リジョーさんが出迎えてくれた。Emerald Isleは対岸に着いてすぐのところで、とても広い敷地の民家で私が想像していた”ホームステイ”とはかなり違っていた。
民宿のように、5部屋の客室がありこの日は私以外にもう一組、フランスからの夫婦が滞在していた。各部屋にはシャワー室とは別にオープンシャワーも付いていて、夏の暑い日はこのオープンシャワーで汗を流すと気持ちいいだろう。また、アーユルヴェーダ・マッサージ(要予約&別料金)もできるので、是非体験してほしい。
周りは一般の民家ばかりで、昼間はそれなりに人の声が聞こえるのだが、夜は本当に静か。夕食の後は、フォークソングショーと題した小さなイベントがあり、2人のおじさんが地元の言葉で歌を3~4曲披露してくれる。その後、少しリジョーさんとお話をすると、女優の中谷美紀さんも泊まってはいないがここに来たことがあることがわかり、そのときのことが書かれた本(著・中谷美紀さん)を読ませてもらった。
庭を案内してもらったり、部屋の置物を説明してもらったり、本当に良くしていただきもう1泊したいくらいだったが、リジョーさんとそのお兄さんに別れを告げアレッピー市内へと向かった。
今回の旅で一番楽しみにしていたのがアレッピーのバックウォータークルーズ。市内中心部の船着場から乗りたい船を選び、料金を交渉後出発。
運河をゆっくり進み、やがて静かになると左右に家が並んでいる。家事をしているお母さんに自転車で遊ぶ子供。川にもぐっている子供もいて、普段の生活が垣間見れて良い経験になった。
もう少し進むと今度は左右にヤシの木が見え始め広い湖へと繋がる。だが、広い湖をただひたすら進むだけでは面白くない。違う方向にまた1本、川が流れておりその方向に進むと、次は川岸にずらーっとハウスボートが並んでいるエリアに入る。
ずっと先までボートが止まっており、各ボートお客さんを迎え入れる準備をしていた。そんな光景が1kmほど続き、また広い海に出ると少しゆっくりしながら、帰る方向へ向かう。往路とは少し違う道を通りながらなので飽きない。途中でジュースやお菓子が売っている店に立ち寄って少し休憩もできる。ウェルカムドリンクのようにココナッツをその場で割ってジュースにしてくれた。
天気の良い日だったので日差しが強かったが、少し風を感じながら、ゆっくり進むので心地よく1日中ずっとクルーズしたい気分だった。通り過ぎる人たちや川岸に住む人々は皆手を振ってくれて、フレンドリーさも伝わった。2時間のクルーズだったが、同じ景色ばかりではないのでまったく飽きず楽しめた。
午後、今回滞在はしなかったが、アレッピー近郊にもう一つ有名なホームステイ先があるということで、訪れてみた。
夫婦で経営しているVembanad Houseという所だが、ここの一番の魅力は敷地が広いということ。全4部屋だが、家の目の前には庭が、またその庭の前に湖が広がる。各部屋は清潔感があり、また庭は綺麗に手入れされており目の前の景色だけみるとここがインドであることを忘れさせてくれる。すぐ隣に家があるというわけではないので、1日中静かに過ごせるだろう。
翌日、朝から夕方までずっと市内観光。ダッチパレスやシナゴーク(2箇所とも撮影禁止で特にシナゴークは本当に綺麗だったので残念でした。)、その後、ジェットボートに乗れるメインジェッティーから、スピードボートに乗せてもらった。45分間で、運転手さんがいろいろガイドしてくれる。前日のクルーズと違ってスピードが出るので、風を切って進むので気持ち良かった。
ボートの次はフォート・コーチンへ。フォート・コーチンではインドでここでしか見られないというチャイニーズフィッシングネットを観光。しかし、実際に作業をするのは、午前8時に終わるそうで、網を引き上げているところを見ることはできなかった。
その後、フォート・コーチンの海沿いを30~40分散歩し、聖フランシス教会へ向かった。教会の正面は工事中でこれまた残念だったけれど、教会の中にはヴァスコ・ダ・ガマを土葬した場所がまだ残っており、大変感動した。
せっかくなので近くにある、サンタ・クルス聖堂も観光しに行った。隣にあるキリスト教の女学校の生徒が下校の時間にお祈りをしに来たりして、とてもにぎやかだった。
このサンタ・クルス聖堂の向かい側にあるケララ・カタカリセンターにて毎日カタカリダンスを見ることができるのである。
コーチンで有名なこのカタカリダンスは、役者が自分でメイクをするところから見学できる。メイクと聞いて私は完全に女性をイメージしていたのだが、舞台袖から出てきた3人の役者はなんと全員男性!そして、当たり前のように3人並んで座り、それぞれ役柄のメイクアップを始めた。
メイクには約1時間をかけるのだが、役者のうち2人は男役、1人は女役だ。普段見ることのない男性が真剣にメイクする光景はなんとも不思議で、面白かった。主役の男性は途中から立体的なメイクもするため、そのメイク専門の男性にメイクを手伝ってもらっていた。
1時間後、ダンスショーが始まるのだが、役者3人とも素の顔とは全然異なる顔で、派手で重たそうな衣装を身にまとい、登場した。
ダンスにも迫力があって魅了された。1時間30分ほどのショーだが、シーンとしては4つのシーンをゆっくりゆっくり進めていくのである。
カタカリダンスには簡単なストーリーがあり、顔の表情やジェスチャーのみ(言葉なし)で表現する。入場のときにあらかじめストーリーの内容が書いた紙を配ってもらえるので、内容が把握できている状態で鑑賞するのだが、ストーリーを読んでおかなくても理解できるんじゃないかと思うほどの演技力で本当にすばらしかった。日によって異なるストーリーが公演されるので、何回見に行っても飽きない。カタカリダンスの余韻に浸りながら、ホテルに戻り翌朝、早朝の便でデリーへ戻った。
デリーへ戻ったあともインドの定番とされるゴールデントライアングル(デリー・アグラ・ジャイプール)を回り朝から夕方までみっちり観光し、日本へ戻った。どの観光地も勉強になり、感動したのだが、私自身遺跡というよりは帝廟や墓廟に興味があることに気づいた。そして、クルーズやショーなど体感できる観光が好きなので、これからもいろんな地に出かけ、変わったことをトライしていきたいと思った。
2011年12月 栗山