ラオス - タム・コンロー洞窟

ラオス - タム・コンロー洞窟


ラオスにタム・コンロー洞窟というものがある。
ああ!あのタム・コンローね、知ってる。という人がいれば、今度お茶でも飲みながら私と語りましょう。
そもそもなぜこの洞窟へ行くことになったかというと、地球の歩き方でたまたま目についたからである。たったの1ページしか掲載されていないにも関わらず、世界遺産の古都ルアンプラバンを断念してまでこの洞窟を選んだのだから、もはや運命に導かれたとしか思えない。ともかく、直感だけで決行した結果、めちゃくちゃパンチの効いた素晴らしい洞窟であった。なぜこの洞窟が有名にならないのか理解できないほど。
この良さを人に知ってもらいたいと思う反面、誰にも教えず秘密にしておきたいという気持ちでいっぱいで、本当は書きたくない。しかし、やむを得ず今回は書く。


ビエンチャンを朝8時に車で出発し、道中休憩や食事を挟みながら洞窟手前に到着したのが15時。ここまででもかなりの長丁場だが、本番はこれから。
歩き方で懐中電灯とサンダルが必要と書いてあったが、どうせそんなにたいしたことないだろうとなめてかかって、普通の靴で向かった私。
ただ、念のために登山用のヘッドライトだけは持参した。
到着してボート乗り場でライフジャケットを着る。
ん?本格的だな・・・
そしてすぐに私の靴は終わった。
スタート直後から川の中に足を突っ込む事態となった。そうしないと進めないのである。
この洞窟はそこら辺の生易しいものではなかったのだ。
ライフジャケット(これは現地でレンタル)、サンダル(間違えてもヒール付きなんぞ持参しないように)、懐中電灯(両手が使えるようヘッドライトが良い)は必須である。


ボート(4、5人乗りの簡素なもの。前と後ろに現地の案内人が乗るので実質客は2、3人が定員と思われる)に乗り込み、真っ暗な洞窟へ入っていく。
本当に暗い。ボートのモーター音と川の流れる音だけが聞こえる。
勝手知ったる船頭が何の目印もない暗闇をどんどん進んでいく。
結構速度が出ており、風が心地よい。
自分のライトで好きな所を照らしながら楽しむ。

そろそろゴールかな・・・
・・・・・・
・・・・全然止まる気配がない。
45分ぐらい経ったと思う頃(興奮していてあまり覚えていないが)、ようやく停止し、
鍾乳洞のある場所へ上陸。
ここからは歩いて回る。ここのみ電気が通っており、ライトアップの中を進む。
それでも薄暗いのでヘッドライトは引き続き使用。
長い歳月をかけて出来た壮大で美しい鍾乳洞がいくつも見られる。

一通り鍾乳洞を見た後はまたボートに乗り進む。
折り返し地点で、このまま帰るか、この先に進むと村がありますが、どちらにしますか?と聞かれ、そんなもの、当然進むに決まっているだろう。
靴はもはや即死しているので、何も怖くない。膝までどっぷり川に浸かり、ボートの方向を変えて村へと進む。
引き続き暗闇の空洞を進み、やがて視界がひらけて緑の山が飛び込んできた瞬間、ジュラシックパークのテーマ曲が脳内で流れた。


こんな絶景見たことがない。
数日前までオフィスでPCをカタカタしていた自分が今こんなに素晴らしい大自然の中にいるなんて一体何事だ、と思った。
村では簡単な売店とトイレがあるようだった。子供達が元気に遊んでいた。
同じルートをまたボートで戻り、入り口と同じ出口から出てくる。
結局、計2時間ぐらいはボートに乗っていたと思う。
洞窟観光というと、まぁせいぜい数分ボートに乗って、数十分鍾乳洞を見て、はい終わり。と思っていたが、もはやこのタム・コンロー洞窟はダンジョンであった。
キングサイズのムカデも出現した。(チューペットぐらいの大きさ・・・怖い・・・)
こんなに見応えのある洞窟観光はなかなかないだろう。
ただし、暗闇が苦手な人、泳げない人はよく考えた方がいいかもしれない。
本当に真っ暗の洞窟に2時間ぐらいは滞在するし、ボート上の自分の体と水面がかなり近い。急流すべりのような地点も通過する。


洞窟観光の夜は近くの村のロッジに宿泊(町まで帰ると時間がかかりすぎる)。
洞窟の余韻をそのままに、森の中にポツリと建つ部屋にはTVなどなく、虫の鳴き声が聞こえる。空にはそれは見事な月と星が。
翌朝目覚めた時の、朝日を照り返す山々と川の幽玄な姿も忘れられないものとなった。


ちなみに。
この素晴らしいタム・コンロー洞窟、西洋人はもうとっくに知っている・・・。
団体で押し寄せるということはないが、個人で来ているのは皆西洋人観光客ばかりで、
アジア人は私だけであった。
それだけ日本では認知度がないということであり、それが惜しくもあり、どうかこのままあまり開発が進まずに、知る人ぞ知る秘境であり続けて欲しいとも思うのであった。

2011年11月 松井

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