ロンドンから列車でおよそ2時間半、
ビートルズで有名なのに意外と日本からのパッケージツアーが少ない港町リバプール。
ロンドンからの日帰りはあっても滞在するツアーを企画している旅行会社は少ない。
今回はファイスタークラブのコースにもあるハードデイズナイトホテルに泊まり、マジカルミステリーツアーの実態をチェック、そしてメインとなるコッツウォルズの視察。こちらも日帰りのオプショナルツアーは多いが“泊まる・過ごす”ツアーを扱っている旅行会社は意外に少ない。そこで、B&Bに2泊して少しでも暮らす感覚を経験し、コッツウォルズの良さをお客様に伝えることがミッションだ。
まずアエロフロートでロンドンに入り、列車で湖水地方を廻りリバプールへ向かう。
リバプールの玄関口となる駅はライムストリート駅
駅を出て左手にいきなりインパクトのある巨大広告が目に入る。
右手にはセントジョージスホール。
新旧のコントラストが綺麗な町だ。
ここがビートルズの生まれた世界遺産の港町かという感慨深い思いで駅に着く。
最初の夜は駅すぐそばのロードネルソンホテル。外観は地味な古いホテルだがスタイリッシュなレストランが印象的でスタッフのサービスもよい。口コミサイトの評判はどちらかというと悪かったので期待していなかった分、得した気になった。値段もお手頃でおすすめ。
時間もないので荷物を置いたらさっそく街を歩いてみることに。
一昨年出来たばかりの一大ショッピングエリア “リバプールワン” までは駅から徒歩で5分もかからない距離。
軽く食事をしてからビートルズの聖地を見に行くことにする。
まずはメインのマシューストリートへ
ここがビートルズ発祥の地といわれているリバプール屈指の観光スポット。
翌日宿泊予定のハードデイズナイトホテルを出て右、すぐ曲がったところがこの通り。伝説のライブハウス・キャバーンクラブをはじめ、4人が通ったパブGRAPESや専門ショップなどがひしめき、ファンにはたまらない通り。
その先にはエリナーリグビーの像もありこちらもカメラを持った観光客が絶えない。
通りを歩いていると中からライブの音が漏れ聴こえ、たまらずキャバーンクラブに足を踏み入れる。
ここは彼らがデビュー前に演奏をしていた伝説のライブハウス。数年前に再建されたが現在も当時の雰囲気を伝えているらしい。カウンターで3ポンド払ってビール片手にステージ前へ。
客層も幅広い。
一人でも気軽に入れるほど雰囲気が良。地下にあるのと客のパワーでとにかく熱くてビールが旨い。
この日はビートルズのトリビュートミュージシャン、ジョンキーツのパワフルなライブを楽しむことができたラッキーな夜だ。
リバプールといえばサッカーも有名。翌朝早起きしてバスでリバプールFCのアンフィールドスタジアムへ
市内からは片道20分くらいの静かな住宅街の中にあるスタジアムに歴史と伝統を感じる。
この日はゲームがなかったが記念撮影とショップ見学だけで引き上げることに。
<マジカルミステリーツアー>
午後からはミッションの1つ、マジカルミステリーツアーへ参加。 (£14.95)出発前に日本で予約をしていたのでバウチャーをもって14:30アルバートドッグに集合。
車内は50名くらいでほぼ満席。日本人はほとんどおらず世界各国よりファンが集う。乗車直前にカツラをかぶって“なりきる”香港からやってきた気合十分の2人組の横で、アメリカからやってきたかなり年配の女性は早くも涙ぐみモードに切り替わっているなど、それぞれの思いを乗せてバスは発車した。
このツアーは4人が生まれ育った家をそれぞれ廻り、さらにペニーレーン、ストロベリーフィールズなどの曲の舞台を約2時間でまわり最後はキャバーンクラブのあるマシューストリートで終わる旅。
下車ポイントは
12アーノルドグローヴ(ジョージの家)
20フォースリンロード(ポールの家)
残念ながらこのツアーでは外からしか見られないが管理しているナショナルトラストが中に入るツアーをやっているらしい。ここで初期の名曲が数多く作られたようだ。
メンディブス(ジョンの家)
さらに、ペニーレーンとストロベリーフィールズへ。
元々は孤児院だったが現在は閉鎖されてしまっており、赤い門がそのまま残っている。どちらもバスが軽く一時停車をしたところを車窓から観光するのでシャッターを押すのが大変難しい。
そして最後はLIVERPOOL INSTITUTE ここはポールとジョージが通ったスクール
これらを車窓見学してツアーはあっという間に終わってしまう。参加した感想だが、座席は窓側、出来れば進行左側がおすすめ、しかも前方がいいのでまずは早めに行って並ぶこと。 滞在時間の短い人であれば効率的にツアーの雰囲気を味わえるのでいい土産話になるかもしれないがちょっと思い入れのあるファンならじっくりみるためタクシーのチャーターが良いと思う。
こういったスポットを巡るガイドブックもいくつか出ているのでそれを参考に興味あるところをピンポイントで行くことをお勧めする。たまたま乗ったタクシーには2時間で40ポンドと書いてあった。詳しいルートはわからないが交渉してみてはどうだろか?1名だと割高になるが2名以上ならお手頃だと思うのでぜひおすすめする。
<憧れのペニーレーン>
ペニーレーンは曲が出てから40年以上経った今でも歌詞の通りそのまま残っている建物があるので是非降りて確かめたほうが断然良い。ツアーの“車窓観光”だけでは消化不良気味の私は再チャレンジを決意。もともとこの詩には人が行き交う日常の風景が描かれているので朝の通勤通学時間帯が良いのでは?と閃き、朝早くタクシーで向かった。通りすがりの学生にシャッターを押してもらった。なんということない、ごくごく普通の場所、日常の風景がとても“特別”なものに見え、なんとも言えない気分にさせられるのは何故か?随分昔にきいたあの曲、今も褪せることないあの名曲の あの場所に自分がいることが夢のようだった。
床屋
銀行
ラウンドアバウトとシェルター
<アルバートドック>
2008年にヨーロッパの文化都市に指定されるほど再開発が進んでいるリバプール。
その代表格がアルバートドック。
マージー川沿いにおしゃれなお店、レストランがたくさんあり、地元のデートスポットになっている。
ビートルズ関連では最大級のショップ“ビートルズストーリー”もあり、飽きることのないエリア。(もちろんビートルズに興味なくても楽しめる)
夕暮れ時はとても綺麗。目を閉じるといろいろな音が聞こえてくる。写真では伝わらないのが残念
リバプールのプレスリーといわれ若くしてこの世を去ったロックンローラー、ビリーフューリーの銅像が哀しいほど美しくて立ち止まって見とれてしまう。スーパースタービートルズの突然の出現によって地味な存在になってしまったのだろうが、きっとこのリバプールでは彼ら以上に輝いていたのかもしれない・・・と勝手に思いを巡らして写真に収める。
<ハードデイズナイトホテル>
2008年にオープンした世界で唯一、ビートルズをモチーフにした話題のホテル。ここに1泊してみた。
PCや部屋の細かいアメニティなども充実しておりハード面のクオリティが高い。また、スタッフひとりひとりの接遇もとても気持ちが良い。ビートルズに全く興味ない方でも寛げるおすすめのデラックスホテル。
スタイリッシュなロビーには至る所にビートルズのポートレイトが飾られている。
また部屋ごとにインテリアも異なる。ちなみに私が案内された部屋はジョンレノン
もちろんビートルズだけのチャンネルもあり徹底している。
そして最後の夜は2日続けて夜のキャバーンへ。たまたま出会った地元のプロのミュージシャンたちと仲良くなり閉店まで。今年の夏もフジロックで来日したばかりの本物のプレイヤーと出会えて超ラッキーだ。
ビール片手に会話がつきない。「一期一会」の言葉が表すようにこれが旅の楽しいところ。
ロック好きなら、かなりテキトーな英語でも十分通じる(?)こともわかった。
さらに一回り腹が突っ張ってしまった状態で翌日からはコッツウォルズへ
ハートオブイングランド コッツウォルズへ
ロンドンから西へ200キロ、イギリスで最も美しい丘陵地帯コッツウォルズ
コッツウォルズとは「羊小屋のある丘」という意味。
はちみつ色の家々、はてしなく広がる緑、絵のように美しい田園風景
かつて羊毛産業で栄えた時代の建物がそのまま残されている村々・・・
残念ながらこの村々はとても2日では周りきれないため、人気のある代表的な村をピックアップして訪れた。
ちなみにファイブスタークラブのツアーの場合、コッツウォルズまでは
1.ロンドンから送迎の車で行く(およそ2時間)
2.電車でチェルトナムまで行ってそこから送迎車で行く
のどちらかとなる(2010年10月現在)
今回はリバプールから列車で向かったので途中バーミンガム、ヘレフォードで乗換えをしてモートンインマーシュ駅で降りる。そこから現地旅行社のJさんご夫妻のお出迎えをうけてストウオンザウォルドまで向かった。
(ちなみにモートンインマーシュ駅からはタクシーが一般的。または本数が少ないが定期バスもある。)
ストウオンザウォルド
モートンインマーシュから南へ車で約10分
コッツウォルズ丘陵の中心部で最も高い、丘の上にある村
ここはアンティークを扱う店が数多く集まる、いわゆるマーケットタウン。
中世の時代には羊毛取引の公正さを示す象徴の建物“マーケットクロス”はちょうど村の真中あたり。
メインストリートをちょっとそれるとこのような小道に遭遇する。個人的にはこういった小道を歩いて何か(日本だと変な看板など)を見つけるのが大好きだ。
初日はこの村のB&B 99(NINETY NINE)に宿泊
メインである パークストリートに面して建つB&B。近くにはおもちゃ博物館もあり、レストランも多い。
部屋数は3室と少ないこじんまりとしたB&Bだがそれぞれの部屋は相対的に広めに設計されており家族4人くらいで利用するのがちょうど良いくらいかもしれない。調度品も凝っており部屋全体の雰囲気が良い。
裸足で絨毯を歩くとまるで自宅にいるような気分になれる。また、バスルームもとても清潔。広々としたバスタブでゆっくり体を休められる。
話好きのオーナー自慢のイングリッシュブレックファストもボリュームたっぷりでとても美味しい。
翌日は早起きして貸切専用車で主な村を訪れることに。
あいにくの悪天候で時折激しい雨に見舞われ全体的に“写真”がうまく取れなかったのが残念。
バイブリー
ストウオンザウォルドからさらに南に下ること30分。
作家のウィリアムモリスがイングランドで一番美しい村と絶賛した村に辿り着く
この村の代表的なホテルは“バイブリーコート”
今からおよそ400年前に造られた貴族の館を利用したマナーハウスに泊まり、時間に追われる日常から離れ、ゆっくりと過ごし束の間の貴族気分を味わうことができそうなホテル。
さらにもう1つ目を惹かれたのがスワンホテル
こちらもおよそ400年前に創業。外観の蔦が特徴的。結婚式場としてもよく使われる地元でも人気のホテル。
このホテルの前を流れるのがコルン川
コルン川沿いにまっすぐ歩くとすぐ先に「アーリントンロウ」と呼ばれる別の村がある。
14世紀に造られたまま現存しておりその佇まいはとても感動的。現在はナショナルトラストによって管理されている。ここでちょうど大手旅行会社のロンドンからの日帰りツアーに遭遇した。残念ながら自分も彼ら同様もこの村は素通りとなってしまったがここは決して“見に来る”ところではなく“過ごす”ところ。これは是非強調したいと思う。少なくとも1泊でも滞在しゆっくり本を読んだり、好きな音楽を聴いたり、朝早起きして散歩したり、アフタヌーンティーを楽しんだり、徹底して非日常を体験をすることをお勧めする。
チェルトナム
コッツウォルズへのゲート、中心の都市
18世紀に温泉が発見され王室の保養地として発展した町。はちみつ色の家は全く見られなく、ヴィクトリア様式の建物が多い都会の町。ツアーで最初に泊まる場合のホテルはメルキュールクイーンズ
またはB&Bリピアットハウス
のどちらか。ここを拠点にコッツウォルズの村を観光するのも良いと思う。
チッピングカムデン
コッツウォルズの北に位置する。かつては羊毛の取引で栄えたマーケットタウン。
チッピングは旧い英語で「マーケット」を意味する。
マーケットホール・・17世紀に建てられた商いの中心地。ハイストリートの中央にあり今では観光名所の1つになっている
また、この村ではコッツウォルズでは珍しい“茅葺き屋根”の家が見られる写真では見たことあったが生の姿は感動的だ。
ロウワー&アッパースローター
ほとんど人がいないとても静かな村。依然雨が強かったがせっかくなのでアッパーからロウワーまでパブリックフットパス(公共の遊歩道)を歩いてみた。
コッツウォルズにはこのようなフットパスが数多く存在する。美しい自然の道をゆっくり歩くだけで
幸せな気分になれる。そしてフットパスの終点にアンティークショップを発見。店内に流れるBGMが自然と体に入り込んできてとても不思議な気分。(知るはずもない)遠い昔に迷い込んでしまったような錯覚にしばし陥ってしまった。
ボートンオンザウォーター
リトルベニスと呼ばれるとても綺麗な村でコッツウォルズのちょうど真ん中に位置する。
町の中心を流れるウィンドラッシュ川はとても澄んでいる。ここでは多くの水鳥に会うことができる。
この川と並行してお店や銀行、郵便局などが建ち並ぶ。
はちみつ色の家並みはもちろん、モーターミュージアムやガイドブックにも紹介される有名な香水工場兼お店、
コッツウォルドパフューマリー、
村を9分の1に縮尺して造られたモデルヴィレッジ
など観光客にとっては最もにぎやかな村かもしれない。
1泊した翌朝、早起きして散歩。
コッツウォルズの朝は遅い。7時でもまだ暗い。
生まれて初めて聴く種類の小鳥のさえずりが妙に心地よい、そしてなんといっても空気が美味しい
こうやって早朝の散歩を繰り返し楽しむのが真の健康生活なのだろう。
2泊目はボートンオンザウォーターのB&B ランズダウネビラに宿泊
中心地まで徒歩3分、街のメインであるハイストリートに面している便利なロケーション。
また、モートンインマーシュの駅まで運行するバス停も近い。
とても明るいオーナーご夫婦が家族のようにあたたかく迎えてくれるホスピタリティ溢れるB&B。
このご夫婦に会うために何度も訪れるリピーターのお客様も多いとか。1階のラウンジではインターネットが利用できる(部屋数12)
以上、ファイブスタークラブのツアーではこれらの村を貸し切り専用車でまわるのがポイント。
それぞれの村はそれほど離れていないのだが公共の足が少ないのでこれはとても便利。
あまり時間のない旅には特におすすめ、でもやはり最低1週間、できたらもっと長く・・・
暮らさなければ本当の良さには気がつかないであろう。
個人的にはバイブリーに滞在しながら他の村を訪れるのがベストと思う。
アンティークやショッピングに興味があるならボートンオンザウォーターが良いかもしれない。
帰りはかつてローマ支配の時代にはロンドンに次ぐ大都市であったサイレンセスターを経由してケンブル駅へ。
そこから列車に乗ってロンドンへ向かった。
ロンドンに戻ってからはアビーロード、オックスフォードストリートからベリックストリートをぷらぷら歩き流し、最後の夜は元ローリングストーンズのメンバー、ビルワイマン氏の経営する“ステッィキーフィンガーズカフェ”で過ごすなど、途中のリバプールを含めちょっとロック色の濃い旅となったが、世界に誇るイギリスの美しい自然・湖水地方からコッツウォルズまでを駆け巡るあっという間の夢の9日間だった。
やはり映像やガイドブックで見るのとは生は違う。感動的なシーンの連続も多く見所たっぷりのイギリスだがやはりその国を好きになる決め手は観光地よりも「人」だとあらためて感じた。
特に今回の旅で私が出会ったすべてのイギリスの人は親切で優しくそして控えめで素敵な人ばかり。
人との出会いの素晴らしさを実感し、さらにイギリスに“惚れこむ旅”となった。
2010年10月 櫻本