バンコクを出発して約4時間、眼下に山々が見えてきた。「あの山を越えれば、もうすぐブータンです」と、隣のブータン人僧侶が教えてくれる。ブータン料理は、世界一辛い?国民総幸福量が高い?未知の国ブータンがいよいよ近づいてきた。パロは谷あいにある町。山肌ぎりぎりのフライト、機内の窓の真横に山が迫る緊張感と、期待で呼吸が浅くなる。
パロ空港に到着。数年前に改装された空港内部は新しいが、ブータン建築風の鮮やかな装飾がほどこされている。入国審査を終え、日本語ガイドさんと一路ティンプーへ。
夜、首都ティンプーを歩いてみた。町に唯一つの映画館ではレイトショーをやっている。タイトルは「BAKCHHA」。欲望という意味らしい。。ブータン映画だ。第5代国王の戴冠式を控え、メイン通りは、電飾で飾られている。ガイドさんがよく行くという一軒家風レストラン「ミッド・ポイント」で夕食。ブータンビールを飲んでみる。 アルコール度数は8%とやや高め。標高も高いためすぐに酔いがまわってくる。また、ブータン料理がきつければ、パスタなども食べることができる。仕事を終えた床屋では、若者がボードゲームを楽しんでいる。「マリッジ」という指ではじくゲームだ。似たようなゲームはネパールの路上でもよく見られる。メインストリートでは、生放送の街角インタビューの最中。約1キロ程のメインストリート一本のみだが。思った以上に明るい夜の町だった。
パロでは、民家を訪問して「ドッツオ」に入る。「ドッツオ」とは、焼いた石を入れてあたためるブータン式露天風呂だ。昔ながらの農家にはこのドッツォが民家の敷地内に必ずある。石のミネラル成分が溶け出し体にとてもよいらしい。熱すぎれば水を足し、ぬるければ焼いた石を投入する。合理的な露天風呂だ。お風呂上りには、手作りの粟焼酎をいただく。夕食時には、ブータンの民族衣装「キラ」を着せてもらう。どっぷりとブータン的生活に浸かった1日だった。
ブータン料理は世界一辛い!!本当に。主食の赤米に、おかずはとうがらしとチーズを炒めたもの。ローカルレストランのビュッフェでは、外国人用に辛くない野菜炒めや焼きそばもある。またブータン料理も外国人用にマイルドに味付けされている。ガイドさんには、それが物足りないらしく、厨房に行って生の青唐辛子をもらってきていた。それに塩を付けて食べている。ブータン人は生まれたときから、唐辛子を食べているのか?!
パロのホテルを出発して車で約20分。タクツァン僧院の駐車場に到着。標高は約2,300m.タクツァン僧院のハイキングへ出発。山道を歩くこと15分。水車でまわるマニ車が3つ見えてくる。マニ車は、1回まわるとお経を1回読んだことになる。ブータンの生活にはかかせない仏具。ブータンのお寺に行くと、大概、お年寄りがミニマニ車をくるくる回しながら、仏塔をぐるぐる回っている場面に遭遇する。水車のマニ車は、川の水量が足りないと回ってくれない。ラッキーなことに激しく回るマニ車を見ることができた。山道をさらに進むと、山肌の白い砂利道に出る。ここからは暑さとの勝負。ブータンは標高が高いため朝晩は冷え込む。フリースなどを着こんでいたが厚いので脱ぐ。標高が上がるにつれ、紫外線が痛い。。。一山登りきり、おみやげ物を売るおばさんの集団が見えてきたら、もうすぐレストハウスだ。ここからは、タクツァン僧院の全貌が眺められ、写真スポットとなっている。また温かいお茶や、お昼時にはビュッフェの昼食が食べられる。標高は約2,600m。ここまでの道のりが厳しければ、下山することももちろん可能。しかし、折角ブータンまで来たのだからとやせ我慢して、タクツァン僧院内部を目指すことにした。さらにタクツァン僧院は、もう一山超えたところに。。。本当に辿り着けるのか心配になるくらい遠い。。途中で、馬で登る一群と遭遇。うらやましい。。しかし、馬で登るのは危険が伴うので注意。階段を登ってはおり、滝にかかる橋を超えると、ようやくタクツァン僧院到着となる。標高は約3,100m。残念ながら内部は写真撮影禁 止だが、「グルリンポチェ」が瞑想した洞窟を見ることができる。またちょうど第5代国王の戴冠式を2日後に控え、内部では僧侶の読経を見ることができた。ブォーンという楽器の音と低い僧侶の読経が祭壇室に響き渡る。少年僧侶が吹く楽器は、人骨でできているとのこと。。。インドからの輸入品らしい。タクツァン僧院内部を堪能した後は、1時間30分かけて山をおりる。帰りは下り道だけかと思いきや、登りあり下りありだ。
ブータンから東へ飛行機でヒマラヤ山脈を眺めながらのフライト。天気がよいとエベレストを見ることができる。ネパールに到着。ネパールではエコリゾートの「はなのいえ」にとまる。
アスタムコットはネパールのポカラ郊外20kmにある山村。そこにあるパーマカルチャー農場と併設された小さなリゾートが「はなのいえ」だ。ポカラから車で約20分でミランチョークという村へ。そこから先は乗用車では行くことのきない山道となり、徒歩で約1時間30分のトレッキングとなる。目前に突然、フィッシュテイルが現れたり、ポカラの町が見渡せる展望台があったりと退屈しない。
昼頃到着すると、ランチの用意がある。「お弁当になります」と言われて、フルーツやパンなどなの簡単なボックスランチを想像していたら、何と幕の内弁当が出てきた。白いご飯に梅干。エビフライ、おからコロッケ、鳥のから揚げ、芋の煮物、、、等々、よくある海外の日本食レストランとは違い、本当に日本の味で美味しい。また、野菜は全て「はなのいえ」で取れたばかりの新鮮なものを使っている。もちろん夕食の野菜の天ぷらも絶品で、こちらも畑の野菜だ。ちなみに、朝食はこんがりと焼けた味噌が香ばしい、焼きおにぎりと野菜たっぷりのお味噌汁、玉子焼き、野菜炒めだ。
外壁、土の内壁、蜜蝋を塗った木の床などすべて自然素材でできたゲストルームは、清潔で居心地がよい。シャワールームには小さなグリーンが植えられており、スタイリッシュな印象。テラスからはアンナプルナ連山が180度見渡せる。また、名物の大きな五右衛門風呂は夕刻に入るのがおすすめ。刻一刻と表情を変えるヒマラヤを眺めながら、薪でゆっくりととろとろと加熱したお湯につかっていると、トレッキングの疲れも癒される。持参のシャンプー、洗顔料などは使えない。お風呂に行く場合は、すべて自然に返るようにと、「はなのいえ」手作りのハーブを使ったシャンプーと自然素材の石鹸を渡される。
夜は満天の星を眺めながら、ベッドサイドに置かれた、畑でとれたフレッシュなハーブの香りと、湯たんぽのぬくもりで深い眠りにつくことができる。他のホテルにはない極上のリラックス感が味わえるエコリゾートだ。
2008年11月 山本