静寂の中、オレンジ色の袈裟をまとった何十人もの僧侶が静かに近付いてくる。人々が次々に行う托鉢。その迫力に息をのんだ。
ラオスを発つ朝のことだった。
旅の始まりはカンボジア。成田から飛行機を乗り継いで降り立ったのは、アンコールワットのあるシェムリアップ空港。
空港に着くと、東京から乗り継いできた私達の荷物がなかなか出てこない。どうやら機材の変更によって届かなかったらしい。幸い、1泊分の荷物は手荷物にしていたし、夜にはホテルに届けてくれるとのことだったが、少々不安な旅のスタートとなった。
私がカンボジアという国に出会ったのは、10年前である。入国はしていないものの、タイのパノムルン遺跡から、遠くカンボジアという国を見た。そしてその美しいカンボジアの風景は、ずっと私の目に焼き付いていた。その国に行ける、そう思うだけで嬉しかった。
アンコール遺跡は壮大だった。ひとつひとつが丁寧で、想像力を掻き立てられるものであった。似ているようでどれも違う。もっと知りたくなった。
アンコールワットに昇る朝日を見るのはお勧めだ。出発は夜明け前で、ちょっと辛い。しかし、あの景色を見るとそんなことは忘れてしまう。遺跡を照らす光が自分にも届き、すがすがしい。
また、近年急速に観光化の進むカンボジアでは、ちょっとお洒落なホテルに泊まるのもお勧めである。その中でも、私が気に入ったホテルが「ホテル・ドゥ・ラペ」である。
町の中心にありながら、中に入るとリゾートホテルのようにゆったりとした時間を感じる。遺跡を歩いて疲れた身体を癒してくれる、優雅なステイができそうだ。
カンボジアに3泊した後、もっとアンコール遺跡を見ていたいという気持ちの中、次の国、ラオスへ向かった。
苦手なプロペラ機に乗り、シェムリアップから約2時間で到着したのはラオスの首都ビエンチャン。笑顔のかわいい女性ガイドさんが迎えに来てくれていた。早速、ラオス料理を口にした。正直に言うと、飛行機に酔ってしまい、あまり食欲はなかった。しかし、どんどん食べられる。おいしい。ラオスの食事は私の口にとても良く合ったのだ。
午後はビエンチャン観光。ビエンチャンのシンボル「タートルアン」、「パトゥーサイ(凱旋門)」、「ワットホープラケオ」等を案内していただいた。
ビエンチャンでも昨今、新しいホテルがどんどんでき、人の流れが増している。メコン川に望む豪華ホテルや、日本人スタッフのいるホテルもある。
ビエンチャンに1泊した後、私は世界遺産である古都「ルアンプラバン」へ向かった。
ルアンプラバンは、昔、「ラーンサーン」という王国の都であり、現在は世界遺産の街でもある。他のインドシナ半島の国々同様、フランス植民地時代の建物も多い。
さらに、ラオスの中で最も僧侶が多いルアンプラバンでは、寺院に行く度、僧侶に出会う。彼らは尊い存在である一方で、街の人々にとっては身近な存在でもあるのだ。
ルアンプラバン2日目にパク・オー洞窟を訪れた。日本の五百羅漢と似ているのだが、メコン川沿いの洞窟に、何百体もの仏像が置かれている。洞窟には細長いボートで向かう。川の水が濁っていたので、想像していたメコン川クルーズとは少し違ったが、目に映る川や山、畑で働くおばちゃんや川で遊ぶ子供の姿はほほえましく、約2時間のボートも飽きることがなかった。
メコン川を進んでいくと、突如巨大な洞窟が現れる。なぜこんなところに?・・・と思うような場所だ。しかし、ここは古くからこの地の民族の間で尊ばれ、信仰されてきた大切な場所なのである。そして、今なおどんどん仏像が増え続けることからも、人々の信仰の強さが伺える。
パク・オー洞窟に行く際にお勧めなのが、メコン川に望むレストランでのランチとバーンサンハイ村(酒造りの村)観光である。ラオ・ラーオというラオスの焼酎は、想像以上に強いのだか、村では酒造りの見学と共に、お酒の試飲もできる。
また、夜のルアンプラバンのお勧めは、何と言ってもナイトマーケットである。ルアンプラバン近くの少数民族が集まり、お店を開く。一番多いのがモン族で、洋服・靴・鞄・人形等、いろいろある。外国人向けのマーケットではあるが、価格は良心的で、人々の対応も朗らかである。日の沈んだ世界遺産のオレンジ色のマーケットの明かりがよく映えていた。
最終日の朝は、ルアンプラバンの托鉢を見るため、夜明け前にホテルを出た。ビエンチャンで購入したラオスのスカート「シン」をはくと、清らかな気持ちになれた。(髪形もガイドさんに教わったおだんごにしたところ、現地の人にラオス人と間違えられたほど、気合が入っていたのである。)托鉢を行う道路では、既に多くの外国人がいて、観光地であることを実感した。しかし、托鉢が始まると、街の空気が変わった。
ルアンプラバンには、約200人の僧侶がいるらしい。オレンジ色の袈裟をまとい、それぞれのお寺を出発し、托鉢に出る。小学生くらいの小さな子もたくさんいた。托鉢の時間は、街の空気がずっと緊張していたのだ。とにかくすごい迫力であった。
私は、駆け足で過ごしたカンボジア・ラオスの時間を思い出していた。隣り合う国々なのに違った魅力を持つ。そんな国々に出会えたことが嬉しかった。
そして、朝の托鉢とともに、清らかなすがすがしい気分で、旅を終えることができた。
ファイブスタークラブのツアーでは、もちろん1つの国をゆっくりまわるツアーも、ベトナムとカンボジア、カンボジアとラオス、タイとラオスなど、いくつかの国々を訪れるツアーもあり、どれも魅力がある。しかしやはり私のお勧めは、いくつかの国々を訪れた後、最後にルアンプラバンを訪れるコースだ。ぜひ、ルアンプラバンの、朝の托鉢の空気を味わってほしい。
(2007年11月4日-11日 西田 陽子)