マレーシア、ジャングル探訪記

マレーシア、ジャングル探訪記

ジャングルトレッキング山に囲まれた田舎に育った私は、いろんな森を見てきましたが、今回歩いた森はまさしくジャングル。あらゆる動物、植物の生き様を垣間見ることができました。ジャングルの生き物たちはみんな賢く、したたかでした。

成田からクアラルンプール乗継ぎで、その日のうちにミリというサラワク州の町へ。翌日にはたった30分のフライトでグヌン・ムル国立公園へ。ここは世界自然遺産にも登録されている立派な国立公園で、動物(メインは昆虫)、植物好きの人たちが集まってきます。私が来た数日前には「世界ふし○発見!」のロケ隊がきて、撮影をしていったそうです。まだまだ日本人にはなじみのない場所ですが見所は満載です。
ムルに着いた初日は午後からジャングルトレッキングへ出発します。4キロ近い道のりを、ガイドさんと一緒にゆっくり森の奥へ進んで行きます。森の中は欝蒼としていて、太陽の光が直接は届かないので、熱帯ではあるのですが、意外とそんなに暑くなく歩きやすい気候でした。早速入り口でカラフルな尺取虫に出会いました。
珍しい尺取虫昆虫は苦手っていう人も多いとは思いますが、日本で見たこともない姿の昆虫は、ものめずらしくて、気持ち悪いというより、「こんな生物もいるんだ!」という感動の方が大きいです。水色のトンボ、枯葉色のバッタ、小さな蛇、小さな蟻の大群、鳥、リス、カニ食い猿などなど。毒々しい色をして、敵を威嚇する生物もいれば、体の色を茶色や緑色にして自然と同化している生物もいます。そんなこんななので、ちょっと立ち止まってじっくり周りを見てみれば、いろんな生き物に囲まれていることに気がつきます。
また植物も見たことのないものばかりです。熱帯雨林っぽいなーと思うのは、板状の根を持ち、すごく背が高く、葉っぱの方はブロッコリーのような頭を持つ、フタバガキという種類の植物です。詳しい人は、熱帯雨林のことを「フタバガキ混交林」と呼ぶそうです。
ジャングルトレッキングジャングルトレッキング高いものだと50~60メートルは裕にあります。「絞め殺し植物」といって、他の木の上で発芽して根を伸ばして、最終的には根を成長させて自立した木になってしまうという、一見非常に怖い植物のように思える植物もそこかしこに生きています。雨が多く、土壌の養分が流れてしまう土地で生きていくための賢く、したたかな植物や生き物たちの生き様は、感心させられるというか、感服させられるというか、とにかく大自然の前では地球の大きさを感じさせられます。そんなこんなでいろいろ考えながら、歩いていくともう頭の中が空っぽになっている自分に気がつきました。周りには自然しかないのです。
グヌン・ムル国立公園の魅力は熱帯雨林だけではありません。石灰岩大地にあるこの国立公園には、広い洞窟がいくつもあります。そのほんの一部ですが、直接洞窟に入って地球の歴史の長さを感じることができます。ジャングルトレッキングの後、たどり着くのはディア洞窟とラング洞窟。まず最初に入ったのはラング洞窟でした。ここは比較的小さな洞窟ですが、ライトアップされた見事な鍾乳石がたくさん見られます。洞窟内は非常に暗いので、写真を撮るのが難しいですが、頑張って撮影した写真をいくつか・・・
ラング洞窟ラング洞窟ラング洞窟

さて、次はディア洞窟です。ここは近づくと不愉快な臭いがしてきます。目にしみるほどの臭いです。その正体は、コウモリの糞!世界最大の洞窟入り口を持つディア洞窟には数え切れないほどのコウモリが住んでいます。そのため天井には黒い影がいくつも・・・そして、足元には茶色の糞の山・・・ そんな中を洞窟の奥に進んでいきます。コウモリの糞は虫の住処で、ゴキブリやムカデ、蜘蛛がたくさん・・・苦手な人にはちょっと厳しいかもしれませんが、好きな人にはたまらないでしょう。
ジャングルトレッキングを終えて、洞窟を二つ見ると、ちょうど夕方くらいになります。夕方になると洞窟から餌を求めて飛び立つコウモリの群れが見られます。その姿はさながら空を縦横無尽に飛んでいく竜のようでした。

プナン族の住居プナン族の住居

翌日はホテルの横を流れるメリナウ川を登り、プナン族という森に暮らす民族の住居を見学に行きます。近年まで森の中で狩猟採集生活で生きてきたというプナン族の人たちは、すごく独特な雰囲気を持っています。その後は更に川を登り、ウィンド洞窟とクリアウォーター洞窟という二つの洞窟を見学します。ウィンド洞窟では見事な鍾乳石や石筍を見ることができ、クリアウォーター洞窟には澄んだ川が流れていて、運がよければ目のない魚に出会うことができるそうです。私は残念ながらみることはできませんでした。4つもの壮大で大自然の力を感じられる洞窟を探検することができ、本当に感動の2日間でした。
間近にオランウータンに出会える グヌン・ムル国立公園を離れ、次に私が向かったのはバタン・アイというダム湖。サラワク州の州都であるクチンから車で4~5時間の、インドネシアとの国境にある巨大なダム湖です。この近くにはイバン族という民族が、ロングハウスという独特な家に数多く住んでいて、そのロングハウスを模したヒルトンのリゾートが湖畔に建っています。そのロングハウスリゾートに向かいます。
その途中、野生のオランウータンが保護されたセメンゴ・ワイルドライフ・リハビリ・センターに立ち寄りました。ここでは半野生のオランウータンの餌付けを見学します。ガイドさんには、「オランウータンは半野生の状態で保護されているので、いつも餌付けの場所に出てくるとは限らない」と言われていて、実際に会えるかなぁと不安に思っていましたが、行ってみればびっくり。オス登場早速メス1頭とその子供の2頭のオランウータンが登場!かなり近くで会うことができました。そしてさらに森の奥に進んでいくと、同じく家族のオランウータン3頭と、しばらく待っていると、ついにこのセンターでは2番目に強いオスが登場!オスが出てくることは非常に珍しいらしく、というより、こんなにいっぱい出てくること自体が珍しいようで、大興奮でした。
湖から見たホテルオランウータンに別れを告げて、車で走ること4時間半ほど。( ドライバーさんが大変そうでした…)ダム湖の湖畔にホテル専用の船着場があり、そこから船で30分ほどいくと、対岸にヒルトンバタンアイリゾートが現れます。まわりは山と湖と空しかなく、果てしなく青と緑の世界です。久しぶりに空の大きさを実感しました。ここでは、イバン族の村を訪ねることがメインになります。到着した日は既に夕方だったので、ホテルの周りを散策し、ゆっくり休み、翌日再度ボートで湖を登り、イバン族の村を訪問します。ボートで湖を登っていく途中でも、いくつものロングハウスを見ることができます。一つのロングハウスが一つの村になっていて、それぞれいくつかの家族が一緒に生活しています。ロングハウスの中や、伝統の踊り、吹き矢、闘鶏などを見学します。
村長さんへお土産を渡す私が訪問した村の村長さんご夫婦がすごくいい人で、ここに1週間くらい滞在すればかなりの感動ものの「ウル○ン滞在記」になるだろうなぁと感じました。村長さんの首には大きな刺青が施されていたのですが、首の刺青は非常に痛みを伴うようで、勇者の印だそうです。

バタンアイを離れ、クチンへ戻ります。もちろん行きと同じ道を車で戻るので、片道4時間半ほど。クチンに帰ると既に夜。ほとんど観光する間もなく、この町を明日には出発しなければならないのですが、この町には後ろ髪を引かれる理由がありました。父から聞いた話では、私の祖父が戦時中この町に来ていたというのです。およそ60年前の若い頃の祖父がこの町でどのように過ごしていたのか、思いを馳せながらクチンをじっくり見てみたいところでしたが、そんな時間もないまま、翌早朝には次の訪問地へ向かいました。
次の訪問地は、クチンから飛行機で2時間くらいの大都市クアラルンプール。これまで雨季のマレーシアに逆らうがごとく、晴れ女っぷりを発揮してきた私でしたが、ここにきて、雨季のどんより曇り空に遭遇してしまうことになりました。そのためクアラルンプールの市内観光は全て雨の影響で、少ししか堪能できませんでした。とりあえず印象としては、想像していた以上に大都会!さすがに他民族国家だけあって、イスラム系、中華系、インド系と、とにかく多種多様な雰囲気を持った人たちで溢れていました。町には中国系の寺院や、イスラムのモスク、ヒンドゥー教の寺院、さらには高層ビル群、大きくて新しいショッピングモールが混在!サラワクではほとんど見ることのなかった日本人観光客も、さすがにクアラルンプールでは団体さんでいっぱいです。今まで大自然の中にいたので、それまでとの差にびっくりしながらも、マレー半島とボルネオ島の雰囲気の違いも多少は理解できました。この翌日にはマラッカまで観光に足をのばしたのですが、あこがれていたマラッカ海峡を眼前にして、ついにここまで来た~と少々感慨にふけったところで、そろそろ私のマレーシア探訪記をしめたいと思います。ボルネオの大自然のジャングルと、クアラルンプールのような大都会、さらにはコタキナバルやランカウイといったビーチリゾートなど、いろんな顔を持つマレーシア。初マレーシアはいきなりジャングルという珍しい行程でしたが、その魅力にしっかりどっぷりつかってきました。日常生活を飛び出したい方、いろんな顔を持つマレーシアに足を運んでみてはいかがでしょうか。
追加で・・・クアラルンプールのあるショッピングモールの近くを1人でぷらぷらと歩いていると、一人の女性に声をかけられました。「お姉さんの靴ステキね。どこで買ったの?」と片言の日本語。思わず反応してしまったところへ、「実は私の妹が今度日本の大学へ留学するんだけど、少しでいいから日本のこと教えて」と声をかけてきました。これはきたな~と思って話を聞いていると、お茶でも飲みながら話をしないかということになり、おごってくれるというので、ちょっとついていってみました。そうすると案の定、「妹のうちが近くにあるんだけど、一緒に行って話さない?」と誘われました。地球の歩き方に書いてあった典型的な詐欺のパターン。もちろん一緒に行くことはなく、忙しいからと断りました。これについていってしまうと、カードゲームをさせられ、負けるはずのないゲームで大負けして、大金をとられてしまうということでした。まさしくというのに引っかかったのは初めてですが、こうも見事にマニュアル通りにこられるとすごいなぁと… 都会の1人歩きは気をつけましょう。私の場合は、ジュースをおごってもらい、かわいらしい女の人とお話できたので、ある意味いい思い出となりました。

2007年12月 倉田佑子

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