11月19日
飛行機を降りた瞬間、東南アジア特有のジワッとした熱気が肌にへばりつく。この瞬間、これからの旅の不安感と期待感が一気に高まる。学生時代、バックパッカーとしてしょっちゅう東南アジアを旅していた私にとっては懐かしい感覚だ。とは言うものの今回が私の初のベトナムである。入国審査を無事済ませホッとする。というのは先日の社員旅行で行ったロシアでは、入国審査でかなり酷い目にあった。写真と現在の顔があまりに違うということで(私はそう思いませんが・・)別室につれて行かれ、30分以上あらゆる係員に顔をじっと見つめられたのだ。私の顔を見てはロシア語でごにょごにょと係員同士が相談し、また私の顔をじっと見る。その繰り返し。あんなに長時間、顔を見つめられたのは初めてだ。なのでホーチミンの入国審査の係員が笑顔でパスポートを返してくれたとき「ベトナム最高!!」と入国早々、大声で叫びたくなった。
到着ゲートでガイドさんと合流。あまりに多くの人が待っていたのでうまく会えるかどうか心配だったが杞憂だった。空港をでると、待ち構えているのは沢山のタクシーやバス,そして排気ガスのにおい。ベトナムの経済中心地であるホーチミンの活気を感じた。エアコンの付いたトヨタのミニバンでホテルまで移動。LIBERTY3というスタンダードクラスのホテルだが、予想以上にキレイ。バスルームも掃除が行き届いており、アメニティも充実。初日からルンルン気分。ホテルでしばらく休んだ後、夕食の集合時間までまだ余裕があったので、ホテルでドルをベトナムドンに両替してベンタン市場まで向かった。LIBERTY3からは10分もしない場所にある。食堂や衣料品、お菓子、時計、アクセサリー屋が所狭と軒を連ねており見たことないお菓子や、乾物、雑貨などが売られているので歩くだけでも楽しい。
ホテルでガイドさんと落ち合い、インドシナレストランに移動。店員の感じがよく、「どこから来たのか」「次はどこに行くのか」など質問もしてきて、しばらくコミュニケーションを楽しんだ。生春巻やココナッツミルクのシチュー、ベトナム風焼き飯などをたらふく食べてホテルへ戻る。
11月20日
ホテルロビーでガイドさんと待ち合わせ。この日はリゾート開発が進んでいるフーコック島に行く。ガイドさんとは国内線の出発ターミナルで一時お別れ。出発ロビーでは欧米人の姿ばかり。それもそのはず、実際フーコック行きの飛行機に乗ったのは欧米人ばかりで日本人はともかく、現地のベトナム人でさえ見かけなかった。
フーコック島はホーチミンから1時間足らずで着く。飛行機から見た着陸の光景には興奮した。滑走路はビーチから数メートルの場所に設けられており、まるでビーチに突っ込んでいくようだったからだ。またそのビーチの眺めが美しく、これからここで数日過ごすという事実に幸福を感じずにはいられなかった。
到着ゲートでホテルのスタッフと合流。今回お世話になるサイゴンフーコックリゾートに向かった。ホテルからサイゴンフーコックリゾートまでは約10分で到着。受付を済ませ、部屋へ向かう。部屋は独立した1棟2部屋のヴィラで、すべてオーシャンビューである。これまでいわゆるビーチリゾートに一度も行ったことがなく比較の対象がないからかもしれないが、まさに天国かと思うほど美しいビーチだった。砂浜は白くさらさらで、海は青く透き通っている。波は静かな音を立て、まるでこの場所だけが世界から切り離されているのでは、と思うほどだった。私は即座に水着に着替え、ビーチに向かった。ビーチまでは1分もかからない。ビーチには何人か欧米人がいるのみで、広い海をほぼ独り占め。日本人は全くいない。泳ぎつかれたら、ビーチベッドで一休み。そしてまた、海に飛び込む。私は、今年の夏に行った足の踏み場もない、人々が大挙して押し寄せる東京のプールのことを思い出しながら、これでもか!というほど海水浴を満喫した。
11月21日
この日はホテル近郊を観光。サイゴンフーコックのスタッフが車を出してくれた。リゾート開発が進んでいるといっても、それは単にリゾートホテルの数が増えているだけであって、実際はまだまだ貧しい漁業の島なのである。港近くには市場もあり栄えているものの、それ以外の場所では道路は舗装されていない赤土のでこぼこ道で車が通るたびに砂が舞い上がる。
まず訪れたのは、ベトナム戦争時代に実際に使われた収容所だ。フーコック島は戦時中、反共産主義の立場をとる南ベトナムの軍事基地が置かれていた。現在その収容所はベトナム戦争の悲惨さ伝えるため原形をとどめており、中には捕虜となった共産主義者の顔写真や遺留品などが置かれ見学できるようになっている。
現在注目を浴び始めているフーコックだが、リゾートという言葉が持つ楽天的・享楽的なイメージとは裏腹に過去には悲惨な歴史をもつ島なのだ。リゾートのみの目的でいかれる方は、フーコックがこのような暗い側面をもつ事実にショックを受けるかもしれないが、それは我々が同じような過ちを繰り返さないためにも重要なことだ。是非、フーコックに行かれる方は見に行ってほしい。そして真珠工場、サオビーチを見て回った。サオという星を意味する言葉通りのフーコックで最も美しいビーチと言われている。個人的な感想としてはホテルのビーチと比べきれいではあるが、好きなときにヴィラに帰ってシャワーを浴びるということもできないし、トイレも汚いのでホテルのビーチをお勧めする。
11月22日
この日で夢の島フーコックとはお別れ。本当に楽しかった。世話をしてくれたホテルスタッフと別れ、空港へ。
ホーチミンに再上陸。初日にお世話になったガイドさんと再会。この日はカントーに行く。ホーチミンから車で約5時間、水上マーケットで有名な街だ。
途中、ドライブインに立ち寄り夕食。ここで生まれて初めてフォーを食べる。う、うまい。フォーという存在は知ってはいたが、これほど日本人の味覚に合うとは思わなかった。
余談だが、カントーのホテルはホーチミンの同じスタンダードのホテルと比べると少し見劣りがした。バスタオルは使い回され過ぎカサカサ。調度品もキズがあり薄汚れていた。ホテルに重きを置かれる方はホテルランクアップした方がいいかも・・。
11月23日
朝6時に起床。もちろん水上マーケットに行くためだ。ベトナムの人は早起きで朝から街はにぎわっている。体操している人や朝ごはんを食べている人々を見ながら船着場へ。
約1時間で水上マーケットに到着。様々な野菜や果物を載せた船同士が売買を行っている。マーケットの中を移動しているだけで、船が寄ってきて商品を薦めてくる。しかし、なぜこれほど多くの人々がわざわざ船の上で商売を行うのか、とガイドさんに聞いたところ「彼らは水上生活者で、路上で商売をするのには税金がかかる。だから水上でこうして商売してるんだ」と教えてくれた。なるほど。
ホテルに戻り朝食を食べ、ヴィンロンに移動。ヴィンロンはメコン川クルーズの出発地点だ。このクルーズで気付くのは、あまりのメコン川の雄大さだ。広大で幾つもの支流を持つメコン川は、まさにベトナムにとっての母なる大河なのだと感じた。
途中下船し、昼食をとる。もちろん食べるのはメコン川名物エレファントフィッシュ。正直、メコン川は土色に濁り全く水面が見えないほど汚いので「こんな魚食べても大丈夫か」と思ったが、帰国後もなんら体に異常はないので心配ないだろう。味はというと淡白な白身魚で大変美味しかった。白身をライスペーパーで野菜と巻き、生春巻にして食べるのも旨い。そのほかにも揚げ春巻き、豚の角煮、蒸した海老なども頂いた。このベトナム旅行で一番の食事だった。
その後もメコン川クルーズは続き、途中ココナッツで作るキャラメルの工場や果樹園を見学。ベトナムの暑い気候の中でのクルーズは心地よく、清々しい気分になった。-終了後、ホーチミンのホテルに移動。
11月24日
この日はホテルインスペクションとホーチミン市内観光。初日は特に観光らしい観光をしていなかったので、思いっきり観光を楽しんだ。統一会堂、サイゴン大教会、中央郵便局、戦争証跡博物館を見学。特に戦争証跡博物館は凄まじい。あまりに悲惨で泣かれるお客さんも多いという。再度、戦争の愚かさや無惨さを思い知らされた。
私のたっての希望で昼食はガイドさんに連れて行ってもらったフォーのレストラン。そしてハノイ行きの飛行機に乗るための待ち合わせ時間までドンコイ通りを散策。お土産屋さんを物色していると、やたらベトナム人が話しかけてくる。おそらく日本人観光客狙いの詐欺師か何かだろう。当然ながらついて行かなかったが、このような用心はドンコイ通りでは必須だろう。
ホーチミンの空港で、お世話になったガイドさんとお別れ。飛行機に搭乗し、最後の目的地ハノイへ。
2時間ほどでハノイに到着。ハノイのガイドさんと落ち合い、ホテルに移動。やはり緯度が高いのでホーチミンと比べ寒いと感じた。もちろん、東京と比べると暖かいのだけれど。
ハノイのホテルはEDENホテル。カントーと同じくホーチミンのスタンダードクラスと比べると同じクラスのはずなのに見劣りするのが残念。
11月25日
ホテルロビーでガイドさんと待ち合わせ。車で約3時間かけてハロン湾へ向かう。海面から奇岩が幾つも聳え立つハロン湾はベトナムの世界遺産の一つだ。
昼食はその景色を見ながら船上で頂いた。料理はハロン湾で取れたシーフードが主。カニ、海老、魚、思う存分シーフードを満喫。
クルーズは鍾乳洞のある島へ向かう。この鍾乳洞は高さ約20メートルの巨大な鍾乳洞である。今まで鍾乳洞と言えば、腰をかがめて前に進んでいくような狭いものしか体験したことないので、この大きさには驚いた。話によると嵐の夜、この島に降り立った漁師が嵐から避難する場所を探しているときに発見したそうだ。
ハロン湾クルーズ終了後、ハノイ市内へ戻り夕食。ベトナム最後の食事を楽しんだ。その後はハノイの有名な文化芸能、水上人形劇を拝見。ストーリーに関してはベトナム語で語られるので、深くは理解できなかったが、人形の動きには舌を巻いた。どのように動かしているのか鑑賞中全く見当もつかないほど素早い、複雑な動作を繰り出す。鑑賞後、人形を操っているのは人形の専門学校で修行した人しかできないんだ、とガイドさんが教えてくれたのには納得。
そしてハノイの空港に向かう。ベトナムとのお別れのときだ。歴史、文化、食事、自然とあまりに多くのことを知り、体験できるこのベトナム旅行は大変短く充実した1週間だった。帰りの出国審査のときはパスポートの顔写真かなり怪しまれたけど・・・。
旅行期間:2006年11月19日~26日
橋本康弘