遅い朝焼けとともにホテルの窓から雪に覆われたホウエンシュバンガウ城の姿が、まるで一枚の絵のように目の前に映し出された。誰もが一度は、耳にしたことのある歌劇「婚礼」を作曲したワーグナーが演奏したピアノが置かれた音楽室のあるホウエンシュバンガウ城は、小高い丘の上に建ちまわりが緑豊かな木々に覆われた絶好のロケーションにある。
アムステルダムからシティーナイトラインという夜行列車でミュンヘンに着いたのは、まだ、夜が明けきらない早朝であった。しかしながら、ドイツ屈指の大都市らしく通勤客やこれから旅に出る旅行者で活気にあふれていた。7時51分発、フュッセンの街に向かう列車に乗り込み一路、ホーエンシュヴァンガウ城・ノイシュバンシュタイン城を目指す。そこに近づくにつれてあたり一面の銀世界だ。フュッセン駅から坂道をバスで進みシュバンガウという小さな田舎の村に到着した。そこは、ホテルが建ち並び、まるで、リゾート地という感がある。まず、最初に目につくのは、丘の上にそびえ建つホーエンシュヴァンガウ城だ。降り積もった雪と木々がマッチし、さながら水墨画をイメージしたようである。
ノイシュヴァンシュタイン城は、シュバンガウの村から3~40分坂道を歩いて登らないと見学することが出来ず、HOTEL・ミュラーの前から馬車が出ている。ホーエンシュヴァンガウ城を眺めながらのんびり登る事ができ、風情を満喫するには良いだろう。
ホーエンシュヴァンガウ城は、こぢんまりとした小さな城であるのに対し、ノイシュヴァンシュタイン城は、外観的には、中世の城にふさわしい佇まいをなしている。白色で統一された美しい城である。しかし、中世の情緒を味わいたければ、ホーエンシュヴァンガウ城の内部を見学すると良いだろう。ネオゴシック様式でまとめられた内装は、当時の華やかさが感じられる。ビリヤードルーム・ルートヴィヒ2世の母マリーの寝室や居間・祝祭の間などを見学することが出来る。特に祝祭の間は圧巻だ。長いテーブルの上には、巨大な金メッキのテーブル飾りやルートヴィッヒ2世がモデルとなった銅像も見ることが出来る。ノイシュヴァンシュタイン城は、内部もが巨大さに驚かせられる。さすがにバイエルン国王ルートヴィヒ2世が17年の年月と莫大な費用をかけたことが実感できる城だ。
翌日は、ミュンヘンからドイツの新幹線といわれるICEに乗りニュルンベルグへ向かった。約2時間半の短い旅である。座席は4人掛けで真ん中に大きなテーブルがあり、食事をしながら汽車旅が出来る。午後2時過ぎニュルンベルグに着くと辺りは、曇り空ということもあり薄暗くなりかけていた。ちょうどこの時期は、クリスマスマーケットが開かれ、街全体が買い物客や観光客で賑やかだ。この街は実に観光がしやすい、見所は徒歩圏内に集中し買い物しながら3・4時間もあれば、ゆっくり見学できる。
観光のハイライトは何と言ってもカイザーブルクであろう。小高い岩山の上に建つ古城である。ここから見るニュルンベルグ市街は、言葉にならないほどの美しさである。街全体がレンガ色で統一されさすがにおもちゃの町にふさわしい。今は、城の一部がユースホステルになっていて、ちょうどこの日は、修学旅行だろうか、小学生の団体が訪れていた。
ちょうど日が暮れ、クリスマスマーケットを見ながら駅に戻ることにした。暗い夜道に露店の明かりが映え、中央広場では、地元の子供たちによる合唱の歌が響き合いクリスマスムード満点である。指ぐらいの大きさのニュルンベルグソーセージやグリューワインというホットワインガお薦めである。
次の日は、いよいよ今回の旅で一番の楽しみであるライン川観光と河畔の古城ホテルの宿泊である。ここライン川は、ドイツの父なる川と呼ばれアルプスから北海へと注ぎ込み、気が遠くなるほどの大河だ。その半分以上がドイツを流れ、河畔の古城とぶどう畑の風景が、ライン川の旅を楽しませてくれる。
マインツから特急列車でライン川の景色を楽しみながらコブレンツへ。コブレンツは、父なる川ライン川と母なる川モーゼル川の合流地点、ドイチェス・エックが見所。そこは、まるで湖かの様な広がりを見せ、合流地点である三角地帯は船の先端に立っている様だ。対岸からは、列車の轟音が山間からこだましあい迫力満点の光景だ。ドイチェス・エッグから駅に戻る途中には、レーア通りという歩行者天国を通るとよい。ショップやレストランが数多く点在し、教会や博物館などの見所もあるので充分楽しめるだろう。
コブレンツから普通列車で今回の宿泊地であるサンクト・ゴアールへ、そこから車で5分ぐらい山道を登ったところにシュロスホテル&ヴィラ・ラインフェルスがある。ドイツ最大の廃城として知られ多くの観光客が訪れる。外観は、いかにも古城ホテルらしく古めかしい。しかしながら、内観は、高級感にあふれ落ち着いた雰囲気に心が安らぐ感じがする。客室も白でまとめられ、清潔感が感じられる。ソファー・机・クローゼットなども揃っているので、快適に過ごせること間違いなし。ここに宿泊したならば、是非、レストランに行ってみると良い。ライン川が一望でき、対岸のネコ城や町がよく見え、食欲もわくこと間違いなしだ。夜景もお薦めである。華やかさはないが、暗闇に映し出された町明かりが、旅情を思いおこさせてくれるだろう。
ドイツの街は、中世の街並みと古いお城が数多く残り、まるで町自体が美術館のようである。石畳の小径や、大きなウインドウに張り巡らした綺麗な洋服など何もかもが、絵の被写体となりえる光景ばかりであるドイツの旅を、これからも続けていきたいそんな気持ちにさせてくれる街ばかりである。
旅行期間 2005年12月4~10日 赤崎新一