モロッコでの卒業旅行は、2週間という短い期間ではあったが、さまざまな人と出会い、街をめぐり、自然に触れ、宗教行事をも体験することができ、大変の充実した旅であった。小さなトラブルもあったが、忘れられないのはモロッコの人の心のあたたかさである。
私は旅行中よく迷子になるが、モロッコの街は特に迷子になりやすい。しかし、迷子になると新しい発見もあるのと同時に、親切に必ず笑顔で助けてくれるモロッコ人に出会えたりして楽しかった。道路を歩いていたら、父と息子が車に乗っけてくれた。公共のバスや電車などでは乗る時、降りる時に常に助けてもらっていた。アラビア語もフランス語も全く出来ない私であるが、それでもどうにか教えてくれようと皆寄ってたかって助けてくれようとするその気持ちが本当に嬉しかった。町を歩いていれば案内してくれる女子大生や、少年、おじさんにもであった。そんな数多くの人との出会いが旅の魅力である。
どの町にも忘れられない思い出がある。マラケシュのメディナはとにかく面白い。スークは必ずといっていいほど迷子になるが、奥に行けばいくほど地元の人の生活や仕事をうかがえ興味深い。ここは迷子になったほうが新しい発見があるといえる。そして、そんな時必ず笑顔で助けてくれる人がいる。ジャマ・エル・フナ広場の夜は様々なパフォーマンスや屋台で常に賑わっており、すごいパワーを感じ、お祭りに来ているようだった。
マラケシュから日帰りでウリカ谷やアニの日曜市にも、知り合ったモロッコ人に連れていってもらった。田舎の素朴な生活を垣間見ることができた。
ダデス渓谷には夜遅く着いたため、その迫力はすごいものだった。空を見上げても、星が岩壁と岩壁の隙間の帯のような空間にしか見えないのである。真っ暗でその高さなどわからないため余計に迫力があり、ずっと眺めていると垂直に切り立つ岩壁が迫ってくるようにさえ感じた。
フェズのフェズ・エル・バリ(旧市街メディナ)は1000年も前から、今なお人々が暮らしているのだが、その町並みは迷路である。細い路地が入り組んでおり、そこをロバのタクシーが荷物を載せて通る。そこを子供達が必死に案内を買ってでよう話しかけてくる。まだ7歳くらいの男の子達だ。小遣い稼ぎのため巧みに言葉を操る懸命な姿には、感心である。
モロッコの魅力のひとつはサハラ砂漠といえるだろうが、私は当初モロッコに来たもののサハラ砂漠は私の中ですごく遠いイメージがあり、行くべきかどうか迷っていた。けれども、知り合ったベルベル人達の語るサハラ砂漠は私の興味をさそった。「モロッコに来てサハラを見ないのなら、本当の意味でモロッコを訪れたとは言えないよ」とまで言われたならば、行くしかないと思った。
実際行ってみて本当によかった。夕日に照らされ赤く輝く砂漠は言葉ではとても表現できないほど美しかった。少し歩けば、すぐにもう周りには自分と砂漠しかない世界が広がっている。砂を運ぶ風の音が聞こえ、自然の動きを心で感じた。全てを包み込んでくれる偉大なパワーがそこには存在していた。「神聖な場所」であると、そこで暮らすベルベル人の言う意味が私にも理解できた。
夜はベルベル人のミュージックで盛り上がった。彼らの体からあふれ出てくる音楽、リズムは素晴らしい。一人が太鼓を打ち始めると、それに合わせてくる。一見誰にでも叩けそうなのだが、難しい。リズム感の全く無い私には、到底無理であった。それは彼らの体に染み付いたリズムや歌であり、その音楽を聴きながら過ごした砂漠での一夜は忘れられない夜となった。
私は、旅は人を成長させてくれると信じている。なぜなら、未知の世界がそこにはあり、多くのものを見て、感じて、学ぶことができるから。私は、ファイブスタークラブを通してより多くのお客様により良い旅を提供していけるよう、知識と経験と努力を積み重ね、頑張っていきたいと思います。
浅野 美樹
2003年2月