ドバイってどんな国なのだろう?アラブ首長国連邦のうちのひとつの国、砂漠、らくだ、石油が採れる国、欧米人のリゾート、フリーポートで中東の香港とよばれている、それくらいのイメージしかなかった。ケニアに行く際、エミレーツ航空というドバイの航空会社を利用したので、ケニアの帰路ドバイにも立ち寄って見ることにした。
アラブ首長国連邦は7つの首長国が集まってひとつの国になっている。アブダビ首長国に並びドバイ首長国は有名だ。他の首長国はシャルジャ、、公用語はアラビア語だが、人口の80パーセントがパキスタン、インドなどの外国からの出稼ぎ労働者という事もあり、英語も良く通じる。
うそか本当か分からないが、エミレーツ航空はその名の通りドバイが拠点の航空会社なのだが、アジアもしくはオセアニア発着ドバイ乗り継ぎで中東、ヨーロッパ、アフリカ発着に便利な時間を設定している為、ドバイの発着が深夜や未明になると言われている。その例にもれず、私の乗ったエミレーツ航空 Ek721便はナイロビを18:00に出発し、ドバイには深夜というか未明の00:30に着いた。
イミグレーションを通過する時、アラブの民族衣装を着た男性が列を案内している。写真でしか見たことのなかった民族衣装を見て、脈略もなくアラビアチックな音楽が頭の中をよぎる。中東のエキゾチックな雰囲気を感じてしまい、背中がぞくぞくしてしまった。その後のイミグレーションは全く問題なく通過。荷物をピクアップし、迎えにきていた係員と出会う。真夜中だというのに空港には出迎えの人が多い。車に荷物を積んで市内のリビエラホテルへ向かった。
お金もちの国らしく、道路は素晴らしく良い。まるで高速道路のようだ。走っている車も綺麗な車が多い。ケニアのナイロビで日本の中古車ばっかり見ていたから綺麗に見えるだけなのかとも思ったが、そうではなく、本当に高級車がいっぱい走っている。建物も新しく綺麗だ。まるで東京のお台場あたりでも走っているかのようである。30分ほどで今夜の宿リビエラホテルに着いた。
リビエラホテルはドバイの市内、クリーク沿いにある。カーテンを開けるとまさにクリークに面しており、何艘ものダウ船が係留してある。ダウ船は日本のはしけにちょっと毛が生えたような大きさだが、これに荷物を積んでペルシャ湾を行き来するそうである。すでに01:30を過ぎてしまった。シャワーを浴びて寝る。
翌日は金曜日。イスラム教の国では休息日である。なおかつ今はラマダンで、昼間表で食べ物を食べる事が出来ない。とはいいながらも、両替もしなければいけないし、とりあえず静かな町に出た。夕刻砂漠サファリをしに行くまでは自由時間である。まず両替商を探す。流石にフリーポートだけあってあちこちに両替商の看板がかかっている。ただし金曜日だというので営業している所が一軒もない。
街のなかをうろうろして、市バスのターミナルのそばでやっと金曜日営業している両替商を見つけた。米ドルを出したらすぐにディラハムに両替できた。レートもホテルよりは若干良かったようである。
無事両替もできたので安心して街をぶらぶらする。バスターミナルの地図を見ていると、いろんなところにバスが走っている。ただ30分に一本とか少し使い勝手が悪いようだ。メインロードには路線が何本か走っているので、合計すれば10分に一本位になるようだ。バスはボルボの車でエアコン付。こんなに綺麗な路線バスが走っている国もあまり見たことがない。(というか、私の行く国は綺麗なバスが走っていない国が多い。)
バスターミナルのそばには小さなお店がいろいろならんでいる。ただ、ラマダンなのであまり活気がない。食料品店もシャッターを閉めているし、小さな食堂もシャッターを閉めている。暑いので飲み物でも買おうと思ったのだが、どこもお店が閉まっており、買うことが出来ない。ラマダン期間中は太陽が出ている間、水も含めて口にしてはいけなかったことを思い出した。ただ、ミネラルウォーターの自動販売機は動いていたので1ディラハムでペットボトルを一本購入した。ただあまりおおっぴらに飲むことは出来ない。とりあえず建物の影で口を潤してディバックの中にしまう。
少し歩くとゴールドスークの入口があった。観光客向けなのだろうか、ラマダンの金曜日でも営業している店がちらほら。ただお客さんは全て観光客で地元の人はほとんどいない。人影のまばらなゴールドスークを抜け、スパイススークへ。こちらはもっと静かで、全ての店が閉まっており、何を売っているところなのか分からないほど。
スパイクスークを通りすぎ、またクリーク沿いをぶらぶら歩く。アブラという渡し舟が発着しているところのそばで釣りをしている人を見かけた。ここの釣りはサオを使わずに糸だけで釣っている。餌はパンのきれはしらしい。釣れるかと思ってみていたら小さなアジのような魚がかかった。ビニール袋にそのまま入れてもって帰るのだそうだ。夜のおかずになるらしい。アブラの発着しているところを見ると小魚がいっぱいいる。水も思ったより綺麗で底が見える。
釣りをしているところからまたクリーク沿いにぶらぶら歩くとダウ船が何艘か係留されている。積荷が見覚えのある運送屋の看板をつけた大型トラックだ。日本からドバイを経由してどこか違う国に運ばれるのだろう。このトラックもまさかこんな異国の地に運ばれるとは思っても見なかったであろう。で、またどこか分からないが違う国で第3、第4の人生を歩むのであろう。それもまた運命なのであろうか。彼にもしも意識があるのなら何を考えているのだろうかとちょっと哲学的なことを考えてみる。
トラックが積んであるダウ船のとなりでは40フイートコンテナを横付けして積み込み作業の真っ最中である。積荷は日本製の食用油。コンテナをそのままダウ船に積んでしまえば楽だと思うのだが、コンテナの口を開いて人海戦術でひとつひとつ船に積んでいく。人海戦術で積むのにも、我々日本人が考えがちな効率とか便利さとかとは無縁な何かがあるのだろう。その何かがなんであるか、それは私にはよくわからないが。
街を歩いてみてもラマダンのため食べ物屋が全然開いていない。それではしょうがない。お昼は我慢しようと思う。ただ暑いのでいったんホテルに戻りシャワーを浴びることにした。
ドバイはなにしろお金持ちの国なので、海水を蒸留して真水にしているそうだ。砂漠の国では本来一番貴重なはずの真水がふんだんに使える。あまりお薦めしないが飲んでも大丈夫だそうだ。シャワーを浴びて少し休むと午後3時。砂漠サファリの迎えがくる時間だ。
ロビーに下りると現地旅行会社のTシャツを着たおじさんがまっていた。彼がドライバー兼ガイドだ。出身はインドのボンベイ。ボンベイに行った事があったのでちょっとボンベイの話で盛り上がる。もう一軒別のホテルで他のお客さんを乗せて砂漠サファリに出発した。
車はトヨタランドクルーザー100(以下ランクル100と略す)という一番新しくかつ高級な四輪駆動車だ。ガソリン4500ccのエンジン搭載で、マニュアルミッションである。日本仕様車のランクル100にはマニュアルミッション車がなかったような気がするのでちょっと珍しく感じられた。
高速道路のような良い道を100km/hくらいのスピードで滑るように走る。車も道も良いので乗り心地は大変良い。別のお客さんはカナダ出身だった。ランクル100は良いだろうとにわかトヨタ自動車セールスマンになってしまう。運転手も異存はなし。
途中のガソリンスタンドでタイヤの空気を半分位抜く。砂漠でタイヤの接地面積を広げて走りやすくするためだ。
砂漠に入った。ジェットコースターのように小さな砂丘を登ったり降りたりする。ドライバーは慣れたもので表情一つ変えずにアクセルを踏んだり緩めたりしているが、後部座席のカナダ人はキャーキャーワーワー大騒ぎだ。ドライバーの運転技術は高く、ちゃんとヒルダウンやヒルクライムのセオリーに則って運転しているので、横転する事もなく安心して乗っていられる、というのは分かっている人間だけで、普通の人にはいつ横転してもおかしくないようなスリル満点のドライブと感じられるはずだ。
途中で飲料休憩があり、少し休んだらまた砂丘を走る。ゆれる車内から遠くにらくだ牧場が見えてきた。ここのらくだはひとこぶらくだだ。らくだをじっと見ていてもあまり面白い物ではない。らくだ牧場をあとにしてバーベキューディナーの場所に向かう。
ちょうど日が沈む時にキャンプについた。砂漠に沈む夕日を鑑賞した後、らくだに乗ってみる。らくだに乗る費用は砂漠サファリの中に含まれているので何回乗っても料金はかからない。それ以外にも砂丘でサンドボードを楽しむことが出来る。盛んにガイドが薦めるのでサンドボード(初体験)をやってみた。スノーボードやった事がある人なら簡単なのだろうが、右ターンは上手く出来ても左ターンが全然出来ない。うえから降りていって途中で右にターンしてそのままずるずると降りていく、というあまりかっこよくない結果に終わった。とは言いながら周りの人にのせられて3回くらい滑ってしまった。証拠写真がないのが幸いである。サンドスキーがあったら、昔とった杵柄で、ウェーデルンで斜面を降りてみなの喝采を浴びようなんて思っていたが、サンドボードだったのでこれは出来ずに終わった。逆に久しぶりにウェーデルンをやってみたら、足がもつれてこけてしまい足の骨を折るのが落ちだったかもしれない。(バブルの頃は冬になると毎週スキーに行ってました。Hi)
砂丘の下側にはテントがたくさんあり、社員旅行のイランで皆がはまってしまったシーシャ(水タバコ)がある。さっそく試してみる。費用はかからない。オレンジ味とか林檎味とかうるさい事ばっかり言って申し訳ございませんでしたね。最初から最後までシーシャを堪能させてもらった。
ラマダン期間中はベリーダンスも中止という事で、あとはバーベキューを食べるのみ。ドバイは飲酒にも寛容なところなのでビールも飲める。お隣のシャルジャ首長国は長家は一切飲めないのだが。
羊や牛のバーベキューをお腹一杯食べて帰路に着く。少し走るとすぐに高速道路のような良い道にでて、ホテルまではだいたい40分で着いてしまった。
思ったよりも近代的で綺麗な国ドバイ。フリーポートという事で貿易と観光を主な産業にしているドバイ。中東の香港と言われる理由も分かったような気がする。一番印象的だったのはいろいろな国からきている労働者たちのパワーを感じた事。一生懸命稼いで故郷に錦を飾る為に頑張るという人たちのパワーは、今の日本ではなかなか見ることの出来ないもののような気がする。意外にドバイの本来の住人であるアラビア人にあまり触れなかったのでそんな印象をもったのかもしれない。次回はラマダンではない時期に訪問してみたいと思いドバイを後にした。
石井 清史
2002年11月