念願の、ミュージカル『ライオンキング』を今年初めにようやく観ることができた私に、ケニア出張の機会がやってきた。
時期的に良くないニュースが流れていたこともあり、周りからはかつてない程心配されての出発となった。
到着したナイロビ空港は、8月に起こった火災の影響も見られず、入国手続き、荷物の受け取りと、とてもスムーズに進み、あっという間に出口にたどり着いた。
『日本人デスカ?オ名前ハナンデスカ?』と声をかけられ、怪しむように返事をした私に、『大丈夫!心配なーい!ジャンボ!ようこそケニアへ!!』と、不安を一気に吹き飛ばす、明るい出迎えを受けた。
この日は、ケニアの大統領が空港へ来るらしく、駐車場は満員御礼。出口に向かうも、四方八方を車やバイクに囲まれている。進む方向も皆ばらばら。既に出口に向かい出してから15分以上経過している。『大丈夫?!本当にここから出られる?!』耐え兼ねてガイドさんに問うと、『大丈夫、大丈夫!心配ないよー!ハクナマタータ!』
※ハクナマタタ・・スワヒリ語で、大丈夫・問題ない・心配ない・なんとかなるさ などの意味
本場の『ハクナマタタ』に感動し、ライオンキングのシーンと、大西ライオンの『心配ないさーー!』を思い浮かべながら気長に待つこと約25分。ようやく空港の駐車場から出ることができた。
と、同時に、道の脇にはキリンの群れが・・・!さすがアフリカ!さすがケニア!!
まだ空港の駐車場からやっと出られたところで、カバンからカメラを出す間もなく動物達はごく自然とそこにいた。
今回、スウィートウォーター動物保護区⇒ナクル湖⇒ボゴリア湖⇒ナイバシャ湖⇒マサイマラ動物保護区⇒ナイロビと周遊したが、その中でも、直接動物と触れ合える体験と、ナクル湖、ボゴリア湖についてお伝えしたい。
●スウィートウォーター動物保護区
ナイロビから車で約4時間。宿泊したのはスウィートウォーターテンテッドキャンプ。
一部屋ごとに独立したテントタイプで、動物達がいる外側のテントは地面に設置されており、内側の列は高床式のコテージのような土台の上にテントが張られていた。
テントの内部は、シャワー・トイレ・洗面所もついており、とても快適。
キャンプの前には小さな水場があり、インパラやトムソンガゼル、シマウマ、キリンなどたくさんの草食動物を見ることができる。小さな溝と電線が張ってあるようで、ホテル内には動物は入ってくることはない。が・・・
暗くなってからキャンプへ到着したため、部屋に向かうまでの道の暗さと、薄っすらと見える動物の影、どこからともなく聞こえてくる、かつて聞いたこともない動物の鳴き声に・・・
『ねぇ動物襲ってこない?!鳴き声近いよ?!』
『大丈夫!大丈夫―!ハクナマタータ!』
動物の鳴き声を子守唄に、ゆたんぽでホカホカになっているベッドであっという間に眠りについた。
*** サイの保護区 ***
スウィートウォーターテンテッドキャンプから車で10分。密猟で親を殺されたクロサイのバラカちゃんが保護されている。
ここでは、近くで見ることができるだけでなく、餌やり体験ができる。
密猟者から狙われないよう、角は切られてしまっているが、近くで見るとやはり迫力がある。しかし、よくよく見ると、そのとってもかわいらしいお顔と干草をムシャムシャしている可愛らしい姿にすっかり癒された。
絶滅危惧種であるクロサイは、サファリで見かけることも少ないので貴重な体験だ。
*** チンパンジーの保護区 ***
サイの保護区から約20分。本来、ケニアにはチンパンジーは生息していない。隣国では、密猟や、食用にされたり、ペットとして飼われた後、捨てられたり・・・そんなチンパンジーを、保護を目的にここへ連れてきている。
警戒心がとても強く、私たちに“お尻ペンペン”をしてきた・・!さすがチンパンジーは賢い。その後、木の枝や石、泥球などを投げつけられた・・・。
●ナイロビ郊外
*** ジラフセンター ***
弊社のツアーでは定番のジラフセンター。
絶滅の危機に瀕したロスチャイルドキリンの繁殖センターという名目で設立されたが、現在ではケニアの生徒を対象にした保護・教育プログラムが実施されている。私が訪れた日もたくさんの小学生が勉強しに来ていた。
ロスチャイルドキリンは、膝から下が白いことが特徴で、マサイマラでよく見かけるマサイキリンや、日本でお馴染みのアミメキリンとの違いを間近でじっくり観察できる。
キリンの餌やり体験では、その迫力とかわいらしさを存分に感じることができる。中でもジラフ・キスが流行中。大人も子供もキャーキャー言いながらもチャレンジしては大喜び!
また、キリンの餌のおこぼれを狙って住み着いてしまった、隠れたアイドル☆イボイノシシの親子は、この旅で一番好きになった動物No1と言っても過言ではない程の可愛らしさ!餌を食べる為に前足を折っている姿や、親子仲良くシッポをピンと立てて走る姿は忘れられない。マサイマラでも何度も見かけた。
ジラフセンターの奥には、コロニアル調の高級ゲストハウス”ジラフマナー”がある。緑豊かな庭をキリンたちが自由に歩き回り、ときには窓から首を出してくることも!旅の思い出に、ユニークホテルへ1泊してみては?
*** ダチョウ牧場 ***
ここでは200エーカーの広大な敷地で、ダチョウの生まれた年齢、性別などに分けて飼育しており、卵や肉の加工場も併設されている。
小さなダチョウはとてもかわいいが、大人のダチョウは羽を広げると2メートル近くあり、今にも襲い掛かってきそうなスリル・・・
『こんな柵だけで大丈夫?!飛びかかってこない?!』
『大丈夫、大丈夫―!ハクナマタータ!・・でも、それ以上近寄ったら大変なことになるよ。』
そんなダチョウに乗るという、なんともスリリングなダチョウライドに挑戦!
ダチョウは時速70Kmの速さで走ることもできるが、そんな速さで走られては大惨事が起こるので、スタッフ2人でダチョウを押さえにかかる。そして一歩、また一歩、と慎重に進む・・・。もはや、ダチョウに乗っているのか、おじさんに乗っているのかわからない状況。
しかし、間近で見るダチョウはスリルと迫力満点!!なかなかおもしろい体験だった。
ハラハラしてお腹も空いてきたところで、ダチョウ料理のランチを頂く。鶏肉よりも歯ごたえがあり、とてもおいしかった。見て・乗って・食べて!ダチョウを存分に楽しむことができた。
●ナクル湖
ナクル湖といえばフラミンゴ。
フラミンゴといえばナクル湖。
そんなイメージは大きく崩れてしまった・・・
水質汚染や異常気象の影響により、ナクル湖ではフラミンゴの大量死が発生した。また、生き残ったフラミンゴは近くの別の湖へ移動してしまい、ナクル湖のフラミンゴは激減してしまった。
とは言うものの日本人の私が見れば、そこそこ感動するくらいの数は残っているだろう・・・と思っていた。しかし、その期待も、はかなくやぶれてしまった・・
本当にいない・・・。
また、昨年までは湖の水際の湖畔道路が車で通れていたが、今は湖の近くまでは行けなくなっていた。
ただし、ナクル湖はフラミンゴだけではない!インパラやシマウマ、キリン、ライオンもいる!そして、フラミンゴの次に有名なサイ。マサイマラでもサイはほとんど見られないので、サイを見たいのであればナクル湖へ!また、水辺にはたくさんの鳥たちがいる。
個人的には、今回、マサイマラで雄ライオンを見ることができなかったが、ここナクル湖では雄ライオンを見ることが出来たので、ナクル湖を訪れて良かった。
●ボゴリア湖
ナクル湖から走ること3時間半。道は舗装されており快適で、風景も緑豊かで癒される。
まだあまり聞きなれないこのボゴリア湖は、ナクル湖から姿を消したフラミンゴ達が集まってきている。
ピンク色の広がるこの不思議な光景にしばし見とれた。
その後、湖沿いの悪路を走ること約40分。疲れ果てたところで目に飛び込んで来たのは温泉!噴き出す熱湯と立ち込める湯気の奥にフラミンゴ!なんとも異様な光景である。
このまま温泉に浸かれれば最高だが、そうはいかず・・帰りも悪路を約40分かけてボゴリアのゲートへと戻った。このゲート近くには、ボゴリア・スパ・リゾートホテルがあるので、日程に余裕があれば、ここで1泊することをおすすめする。
しかし、ここボゴリア湖でもたくさんのフラミンゴが死んでいた。水質汚染は、ナクル湖だけでなく、まわりの多くの地域にも広がっているそうだ。
さすがのガイドさんもこればっかりはハクナマタータ!とはいかず、「心配です・・。」と悲しそうにしていた。
動物たちと身近に触れ合うことで、より環境汚染や密猟の現実が見えてきた気がする。私たちから見ると、ケニアにはまだまだ壮大な大自然と多様な野生動物の宝庫に見えるが、ケニアでもこれらは深刻な問題となってきているそうだ。
帰国後偶然にも、出かけた先で大西ライオンに遭遇!本物の「心配ないさーー」の声量は見事だった。
ケニアの大自然と動物たちがいつまでも「心配ないさーー」と暮らせる日々を祈るばかりである。
2013年10月 冨樫
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