歴史の深さを感じる世界遺産 微笑と美女の溢れる国・イラン

歴史の深さを感じる世界遺産 微笑と美女の溢れる国・イラン


イメージと現実のギャップが大きい国、イラン。1つには情報不足による誤解が原因かもしれない。
学生時代に世界史で習ったはずの記憶はほぼない自分でさえ、多少の知識があるほど、歴史を語るには欠かせないペルシャ文化の国。
教科書にも数多く記述されているのに、残念ながら現在はガイドブックや雑誌にもあまり多く取り上げられていない。そしてその少ない情報の反面、戦争、核問題などのどちらかといえばネガティブなイメージを未だに抱いていらっしゃる方も少なくないと思う。
イランに行くと家族や友人に伝えると「大丈夫か?」と心配されるほど今の日本では怖い国のイメージを持っている人の方が多いようだ。
が、しかし!実際行ってみるとわかるがとても治安の良い国、そしてとても温かい国だということがわかる。
人は皆親切でとてもフレンドリー。特に日本人に対しては憧れのまなざしで接してくれる。
街ですれ違って笑顔を投げると必ずといっていいほど笑顔が返ってくる、微笑がえしの国・イラン。



世界遺産も多く存在し(2011年3月時点でその数12)見所が盛りだくさんあり、まさに感動の連続の観光国イランを紹介したい。
1ヶ月前に出張が決まってから世界史の教科書を引っ張り出してきて軽く目を通し(それ以外の準備ほとんどなし)いざ出発。
今回の出張はイランのいいとこ取り、ベストコースとも言うべき拝火教の聖地ヤズドと神秘の国イラン6都市周遊(3R014)
9日間を専用車と専任日本語スルーガイドでまわる旅。出発前の唯一の不安はといえばお酒が全く飲めないこと。
旅先で、しかも海外で飲めないなんてありえない!!数年前に健康診断でひっかかり、3日だけ禁酒をした経験はあるが、それ以外は酒を飲まぬ日は皆無というちょっと軽度のアル中の自分が耐えられるかどうか?不安が大きいが、健康な体を作る良い機会と前向きに考える。目の前にあるのに飲めないのはつらいが、「そもそも無いんだから無ければ無いでなんとかなりますよ」と現地ガイドからの絶妙なアドバイス。これが効いたのか少しの我慢で欲しいとは感じなくなることが3日目あたりにわかってきた。
●まずはテヘランへ
成田は夜22時発。エミレーツ航空のドバイ乗継で16時間ちょっと。思っていたよりは近く感じる。
しばらく飲めないので昼間から家でガンガンビールを飲む。飛行機に乗ったらすかさずビールの連続オーダー。
ちょっと恥ずかしいかなと思いつつもこの後待ち受ける”禁酒週間”を思えばなんとも無い。ドバイから先、テヘランまではアルコールはないだろうと諦めていたがダメもとで頼んだらこっそり出してくれた。本当にこっそり。だから飲むのもこっそり。どうやら少しだが積んでいるらしい。そのサービスがとても嬉しかったしおいしかった。エミレーツは素敵な航空会社だ。
ほろ酔い状態でテヘランに着く。気になったことだがやたらと入国審査が長く列が進まない。ようやく自分の番がやってきたが、質問してくるわけでもくじっと端末を睨みながら何をそんなにチェックしているのか?と少々不安になる。酒臭いと入国できないのかと一瞬勘ぐったくらいだ。何を審査されたのか、やっと通してもらい、荷物を拾って出口へ。
予定していたガイドさんが家族の事情で急遽キャンセルとなり、代わりに来たというラハマンさんとテヘランの空港でミートする。
日本で空手をやっていて、今もイランで子供たちに空手を指導しているほどの親日家、しかも日本語がめちゃくちゃ上手。
まさにネイティブのガイドさんに巡り会え、とてもラッキーな旅がスタートした。
着後まずはテヘランの市内観光へ。30年前の革命が起きるまでの王様、パフラヴィー王家の夏の離宮だったサアダーバード宮殿博物館へ。

続いてイラン考古学博物館、ここは残念ながら中は撮影禁止、絨毯博物館などを見て周りイランの雰囲気を確かめていく。特に絨毯博物館で見た本物のペルシャ絨毯は本当に美しい。写真ではうまく伝わらないが、見る角度によって変化する微妙なカラーは芸術の心が乏しい自分でさえ感動してしまう。当然欲しくなるが値段を聞くととても手が出ない。

テヘラン市内を移動していて感じたのがとにかくいたるところ、道路が騒がしい。歩行者用の信号もあってないようなもので、割り込み、飛び込みながら歩行者が通り過ぎる風景は日本ではありえない。よく事故にならないなあと感心するほど車と歩行者が関係を作っているのが印象的だった。

せっかくイランに来たのだから当然観光だけではなく地元の文化に触れたい。
居酒屋はないがその代わりにチャーイハーネ(茶店)に行って水タバコをトライすることに。
ここではカップル、家族連れ、または怪しげな男集団、様々な人たちが、お茶を飲みながら水タバコを楽しむ。
自分はタバコをやめて5年くらいになる。今さら吸って大丈夫かな?と思ったがこれが結構おいしくてやめられない。ちょっと吸いすぎて気分が悪くなってしまった。
それからお茶につける砂糖もちょっといい感じ。

イランではよく見かける。これを頬張りながらお茶を流し込む感覚がいい。

デザートはフルーツ、でもなぜか必ずキュウリが入っている。そういえばイランでは朝から晩までキュウリが出てくる。
それらを楽しみながら時を過ごす。周りが何を話しているのかはさっぱりわからないが皆とても寛いでいる。

同じ喫茶店でもどこか日本の喫茶店とは空気が違う。それはなぜか?イランに来た時からうすうす感じていたがこの店で確信したことが、それは綺麗な女性がとても多いことにつきる。建物、街並より、つい女性に目が行ってしまう。目で追いかける姿は単なるスケベオヤジに過ぎないがそれほど綺麗な女性が多い。
イランの女性については黒のチャドルを全身に纏っているイメージが強かったが、意外と自由でオシャレな女性が多いのには驚いた。
ぜひカメラに収めたいと思うものの、勝手に写真取るのはここに限らずもってのほか。でもなんとか旅の思い出に1枚とガイドを通して撮影に応じてもらった。


●食事
まずビールの代わりに飲めるノンアルコールはいくつか種類がある。ほとんどレモンソーダの味に近いものが人気でほとんどの店に置いてある。
でも自分が気に入った最もビールに近いのはこれ。

慣れると美味い。日本も最近はノンアルコールが流行っているがそれに最も近い味かもしれない。食事はとても美味しくほぼなんでも日本人の口に合うのではないだろうか?(きついのは飲むヨーグルトぐらいか?これは無理・・・)
特にケバブが美味い。

もちろん味覚は人それぞれだが個人的にはトルコで食べたものより数段美味いと思う。これは毎晩食べても飽きない。他にもおいしい料理が多いが1番美味しかったのがトマトとなすのシチュー(ホレシュデバーレムジャーン)。
これは何杯でもいけそうなくらい深くて美味しい。

もっともおすすめの一品

●ホテル
今回泊まったホテルはすべてデラックスクラスのホテル。新しさはないがどこも快適だった。
これといって他国の同クラスのホテルと比較してハードもソフトも違うことはない。
興味深いのはイスラム教の国なので必ず部屋の天井にメッカの方向を示す印があること

宿泊している信者がいつでもお祈り出来るように造られている。
それからチップ(枕銭)を受け取ってくれないのにも少し驚いた。訊いてみると、置いてあるお金は人(=お客)のもの、取ったら盗ったことになる。だから触らない。チップは直接受け取るものという考えが浸透しているらしい。
●アケメネス朝の栄光を今に伝えるイラン最大の世界遺産・ペルセポリス遺跡へ
テヘランから飛行機で1時間半、イラン南部のシラーズへ そこから車で1時間くらいかけてペルセポリス遺跡へ

古代アケメネス朝(紀元前550年-紀元前330年ごろ)のペルシャの首都ペルセポリス

かなり気の遠くなる遥か昔を今に伝える遺跡で、ここはヨルダンのぺトラ遺跡、シリアのパルミア遺跡とともに中東の3Pと呼ばれていてイランを訪れるなら必見の観光地の1つ。

入口

クセルクセス門(双頭鷲像)

紀元前512年ごろダレイオス1世によって建築が進められその後子であるクセルクセス1世によって完成された。その中心となるアパダーナ(謁見の間)では即位式やノウルーズと呼ばれる新春の訪れを祝う大切な儀式が行われていた

百柱の間にある悪魔と王の闘争像は悪に対する王の力、勝利の象徴といわれている

至る所に刻まれた貢物を献上する人々が描かれたレリーフから当時の王の権力の大きさがわかる

紀元前333年にアレクサンダー大王に攻め落とされ廃墟となったがそのままの姿が今も残っている

お勧めのポイントは高台から広がる眺め。ここは遺跡を一望できる絶景ポイント

気の遠くなるほど遥か昔の遺跡の中に身を置くと、その年月、歴史の深さに感動せずにはいられない。
●拝火教(ゾロアスター教)の聖地ヤズド
シラーズから北へ400KM、車でおよそ5時間、ヤズドはイランのほぼ中央に位置する。
ここはアケメネス朝、並びにササーン朝時代に国教であった拝火教(ゾロアスター教)の聖地として知られている。
まずこの地で訪れたのがゾロアスター教寺院。入口には善の火の神アフラマズダの像が見られる。

1500年以上前からずっと燃え続けている聖火は必見

次いで最大の観光ポイントである沈黙の塔へ。
ゾロアスター教徒は火・水・土を神聖視していたのでそれらを汚す事を嫌い、遺体を山の頂上で鳥葬・風葬していた。
静かな荒野に佇む高さ50メートルくらいの小高い山は自由に登ることが可能で、向かって左が男性、右が女性の山。

男性用の山は険しいので団体客はほとんど女性の山に登るらしい。偶然居合わせたイタリア人のグループは女性の山に登っていった。

頂上には直径10メートルくらいの円形のスペースがあり、70年くらい前までは死者が葬られていた実際の場所を見ることができる。


さらにこの丘からの眺めが素晴らしい。ここから街並みや空を眺めていると本当にここから多くの人たちが天国へ旅立っていったのか?
など想像に耽ってしまう。偶然カップルがラブラブしていたがそもそもデートで来るようなところなのだろうか?と疑問を持ちつつ、言葉には表せないなんともいえない感情を抱きながら下山した。今でこそ家が立ち並んでいるが少し前まではまったく何も無い、まさに荒野であったらしい。


●イラン最大の観光都市・美しき古都イスファハン
国内、国外問わずイランで最も多くの観光客の訪れる都市イスファハン。今回の旅の中で最もメジャーな都市を最後に訪れた。
サファヴィー朝時代(16世紀)のイランの首都であり、かつては世界の半分と称されるほど栄華を極めた。


その中心にあって、現在は世界遺産に選ばれているエマーム広場はまさに広場そのものが美術館と思えるほど大きく、数多くの見所がある。


マスジェデエマーム

メフラーブ(メッカの個方向を示すくぼみ)

メンバル(説教壇)

アーリーガープ宮殿からは広場全体が一望できる

宮殿の最上階の音楽ルームは美しい音を出すために計算された設計となっているのが特徴

イスファハンはイスラム芸術の集大成で、息をのむほどの美しさを誇る建築物からミーナーカーリー(陶磁器)やペルシャ絨毯まで、伝統工芸品の数々を手に入れることが出来るイラン一のショッピング天国エリア。

エマーム広場に連なるバザールは1日では廻り切れないほどの大きさでいつも地元の家族連れやカップルで賑わっている

広場から南へ少し離れた、街の中心にあるハージュー橋も青空に映えるとても綺麗な橋。偶然天気が良かったので良い画が撮れた

この橋は2層構造になっていて、上は王様が宴をおこなったというテラスがある17世紀に造られた歴史のある橋

さらにそれよりも有名で人通りが絶えないのがスィーオセ橋。こちらもイスファアンのシンボル。ザーヤンデ川の水面に33のアーチが映る姿はとても綺麗で印象的

橋の下にはちょっとした休憩所があってお茶やスープが飲める。たまたま居合わせた人たちと記念撮影を

どうやら日本人には相当興味があるらしい。お互い簡単な英語でコミュニケーションが取れることがある(でも基本はペルシャ語) 。他にもイスファハンのメインストリートで立ち止まっていると英語を勉強している学生(残念ながら男)からはよく話しかけられる。日本を心底リスペクトしていることが伝わってきて非常に光栄である。
このイスファハンは最もイランらしさを体感できる都市ではないだろうかと感じた。
先に訪れた遺跡も素晴らしいがそれよりも最も数多くの“素材”が詰まっていて個人的にはイランの中でもっともおすすめの都市であり最も理解を深めることの出来る都市であると思う。時間が足りなかったのが残念。ゆっくりくればもっと多くの発見と出会いがあるだろう。
●カーシャンの70km南東、ピンク色の小さな村 アブヤーネ
テヘランに戻る途中に訪れたキャルキャス山の麓にある、とても素敵な村、アブヤーネ
ガイドブックではめったに紹介されていないがかなりインパクトのある不思議な村。
遠い昔(といっても知る由も無いが・・・)にタイムスリップした感覚だ。
予習もないまま、いきなり連れてこられた(?)せいか感動の度合いが高い。
天気が悪く人影もまばらだったせいでとても寂しく、まさにゴーストタウンの様相を呈している雰囲気がかえって心にささって良い。




ピンク色っぽい赤土で出来た家が立ち並んでいる。ここではすべての建物がこの色の土を使わなければならないらしい。
他のイランの都市とは趣が異なる。かつてこの村はゾロアスター教徒の村であったらしくその名残も垣間見える。

道端に1日中じーっと座っているおばあちゃん(撮影不可)は愛想悪く口数も少ないが話しかけるとしっかりと物を売ってくる、静かなる商売人だ。
●これからイランを計画されている方には是非ツアーで行くことをお勧めする。その1番大きな理由はガイドの存在だ。
先にも触れたがガイドのレベルが感動的に高い。ここイランでは日本語ガイドのレベルは高いと耳にはしていたがここまで高いとは想像もしていなかった。国によっては時として英語を交えないとうまく伝わらないことも多いがそれがまったく必要ない。こちらが知りたいこと、伝えたいこと、微妙なニュアンスも感じ取っていただいたので
まったく不自由を感じなかった。個人差もあるだろが私のガイドさんは日本での生活経験もあって話が早いし理解も早いので彼にガイドしてもらったのが非常にラッキーであったかもしれない。

ガイドのラハマンさんと

出発前のビザの手配については、現地旅行社の招聘状があればスムーズにビザが下りるが個人旅行では難しいかもしれない。
また、足の確保も難しく、例えば街の移動手段であるタクシーも他国と違って乗り降りなどややこしいのでツアーで行くのが効率よくて安心だろう。
●最後に
旅行の仕事に長年携わってきたにもかかわらずこれほど素晴らしい国を誤解していたと痛感した。なぜもっと早く気づかなかったのか?
残念ながらまだまだ旅行業界にも偏見を持っている人、誤解している人が多いだろう。
ファイブスタークラブの一員として、またツーリズムの使命として、今後一人でも多くの日本人にイランの素晴らしさを伝えていかなければならない。
そう決意させてくれるほど過去に例のない“最上の旅、” まさに生涯思い出に残る旅となった。決して大袈裟ではなく。
2011年3月 櫻本

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