ブルドは9月下旬なので少し枯れかかってはいたが見渡す限り一面に草原が広がり、遠くにゲルが1,2軒と家畜が点々と見え、まさに日本人がイメージする「モンゴルの風景」が広がっているそのブルドに来て3日目、エブツーリストゲルの周辺にてガイドのナラーさんと馬主の“お父さん”(とみんなから呼ばれていた)から馬の乗り方を教えてもらった。馬に乗るのは久しぶりで馬がギャロップすると、それにあわせて私の体もドンドンと馬の背の上ではね、それが長時間続くと振動のせいで内臓が体の中でシャッフルされてそれが口からでてきそうな感じがしてくる。また、おしりにも蒙古班のようなあざができ、モンゴルにきて先祖返り、ではないけど、そんな感じで体には結構ガタがきてしまう。でも、乗っているうちにどんな風に乗るのが体に負担がかからないかがわかってくるので心配はご無用。
“お父さん”は顔が広く、たくさんの知り合いのゲルに連れて行ってくれた。モンゴル人は客が好きで、おもてなしも好き。突然の訪問も嫌な顔せずに温かく迎えてくれる。「せっかく来てくれたのだから特製のヨーグルト酒を作ってあげる」「ウルム(自家製の生クリームのような?もの)でお菓子を作ってあげる」とそれぞれのおうちでご馳走になるものだからおなかいっぱいになって晩御飯が入らないほどだった。
ところでこの“お父さん”は「かっこいい」。 お父さんに限らずモンゴル人の年配の男性の顔には年をかさねた深みがあって、味があって、それでいて威風堂々としている。デールを着て馬に乗り、昔と変わらずゲルに住むさまは、ミーハーな「カッコイイ」ではなく、心からの憧れと尊敬を伴う、「かっこいい」のである。
7月の草原は緑のじゅうたんのようになりハーブのいい香りでいっぱいになるという。いつの日か再び訪れたいと思った。
辻 理恵子
2005年9月