ゴールデンウィークが明けてすぐ私は、南アフリカのダーバンで開催されるアフリカ最大のトレードショー、「INDABA」参加を含めた、南部アフリカ研修旅行に参加させていただきました。政府観光局、航空会社、旅行会社などの方々とごいっしょさせていただくことになったのですが、初対面の方たちばかりで、緊張の中、今回の旅行は始まったのでした。
成田を出発し、香港で乗り継いでヨハネスブルグへ。さらに国内線に乗り換え、やっとダーバンに到着。ここまで来るのに丸1日かかった長いフライトに、着いた頃はもうへとへとになっていた。飛行機でぐっすり眠れたにもかかわらず・・・。初めて訪れる南アフリカの地に足を踏み入れた喜びはどこへやら、私のテンションはすっかり下がってしまっていた。着いた最初の感想はもちろん、「アフリカって遠いな・・・。」
アフリカと言えば、広大な大自然、動物王国、枯れた大地が広がる砂漠、鮮やかな民族衣装を身にまとった人々、イメージするのはこんなところだろうか。今回訪れる南アフリカは、アフリカであってアフリカでない、ヨーロッパみたいな国なのかな、恥ずかしながらそんなイメージを持っていた。
確かに、ケープタウンやヨハネスブルグなどの大都市は、整然とした街並みで、欧米系のデパートやスーパー、高層ビルやホテルが建ち並び、ここがアフリカなんだということを忘れてしまう。だがそこは間違いなくアフリカ。そのことを感じさせてくれるのは、やはり広大な大自然と野生の動物、そして何よりも、人なつっこい黒人の人たちだった
アフリカを感じさせてくれる大自然のひとつが、ケープタウンのテーブルマウンテンだ。テーブルマウンテンはケープタウンの象徴的存在。頂上はナイフで切り取られたみたいに、平らになっている。ケーブルカーで5分ほどで頂上までたどり着く。このケーブルカーがなかなか気が利いていて、床が回転式になっている。頂上に上がるまでに1回転するため、その場に立っているだけで、360度景色が眺められてしまう。頂上からの景色を見る前に、その壮大な景色に、私は「すごい!すごい!」を連発、ただもうその一言だった。
テーブルマウンテンを実際歩いてみると、雲がすごく近くて、空の青さに手が届きそうな気がした。この日は朝から曇っていて、頂上までは上がれないかもしれないと言われていたのに、ここに来てすっかり晴れて、素晴らしい景色を見ることができた。なんてラッキーなんだ!もやのようにかかる雲と霧が幻想的で、思わずため息がでる。こんな岩を作り出してしまうなんて、自然の力ってなんてすごいんだろう。こういう壮大な景色や、自然のすごさを目の当たりにすると、生きててよかったなぁと、大げさだけどつくづく思ってしまう。こんな景色が見られて本当によかった!
もうひとつ、アフリカを感じさせてくれる壮大な大自然と出会った。世界三大瀑布のひとつ、ビクトリア滝だ。「雷鳴のとどろく水煙」と呼ばれている、その名の通り、その迫力と言ったらはんぱじゃない。ごうごう、音が鳴っている。特にこの時期は1年のうちで最も水量が多いということで、滝壷に落ちた水が水煙となって上空に立ち上る。それが大雨のように私達に降りかかってくるため、濡れてもいいように雨合羽を着て、その中に荷物を持って、もちろんカメラは二重のビニール袋でしっかりガード。水煙が晴れ上がったときに、そして風向きが変わる前に、すかさずカメラのシャッターを切るのもなかなか難しい。びしょ濡れになったけれど、カッパ姿でカメラを構えるのも、それはそれで楽しかった。そして最後に見ることが出来た、虹も美しかった。こんな大迫力の滝を体験することが出来て、またまた生きててよかたなぁ、としみじみ思ってしまった。
そしてついに、動物たちと出会うときが来た! ヨハネスブルグから飛行機でまずはビクトリアフォールズへ。ジンバブエ入国だ。ここでジンバブエのビザを取得するのだが、なんとも原始的なやり方で、ビザを発給してもらうのに、一人一人すごく時間がかかる。ビザ待ちをしている人で長蛇の列が出来ているのにもかかわらず、係りの人の焦る様子も、急ぐ気も、全然ないところがおもしろい。
やっとのことでビザを取得し、空港から車で約1時間。ボツワナとの国境地点にたどり着いた。入国審査を済ませ(ジンバブエの空港よりよっぽどスムーズ!!)、一応検疫があった。液体を含ませたマットの上に足をのせるだけ。車も一応、液に浸かる。小学校の時の、プールに入る前の、腰まで浸かる消毒みたいだ。これで一応消毒をしてるつもりなんだろうか。笑える。意味も無いように思えるけれど、やることに意義があるんだろうな。そんな検疫を済ませ、いよいよボツワナに入国。目指すは、象とカバの天国、チョベ国立公園!
チョベでの宿泊先、モワナ・サファリ・ロッジに到着した途端、私のテンションは一気に最大まで上がってしまった。目の前に大きなチョベ川が流れていて、広大な自然に、またまた「すごい!すごい!」の一言。どこまでも続く青い空。景色が素晴らしすぎて感動してしまった。
ここには残念ながら1泊しか出来なかったが、それでも滞在時間の短い中で、ボートサファリとゲームドライブのどちらも体験させてもらうことができた。通常は3 時間ぐらいかけてそれぞれのサファリをする所を、1時間半ずつの駆け足でやってもらった。時間が短いということもあって、ボートサファリではあまりたくさんの動物を見ることはできなかったが、次のゲームドライブは本当に本当 に感動した!!!
野生の象を間近で見ることもできたし、インパラやキリンもたくさんいた。せっかくだからどうしても見たいと探しつづけたライオンも、遠くの方に顔が少し見えただけだったが、それでもなんとか見ることができた。双眼鏡でみると動物達は本当にすぐ近くにいて、双眼鏡ってすごいな、と変なところにまで感動した。チョベ川に落ちる夕陽も、 今まで結構いろいろな所で夕陽を見てきたが、その中でベスト3に入るぐらい、 いや、もしかしたらNO.1かもしれない、それぐらい美しかった。 そんな中でも一番感動したのは、もう陽も落ちて帰路につこうとしていたとき、最後に見た、キリンの走る姿だった。10匹ぐらいはいただろうか。親キリンが少し走っては後ろを振り返り、子キリンが追いつくのを待つ。追いついては、親キリンはまた走り、子キリンを待つ。なんて美しいんだろう!!辺りが薄暗くなった中、長い手 足(?)で颯爽と走るキリンの姿があまりに
も優雅で、最後の最後に深い感動を与えてくれた。今日出てきてくれた動物達にありがとう。最後にステキな姿を見せてくれたキリンにありがとう。案内してくれたドライバーさんにありがとう。こんな自然を生み出してくれたアフリカの大地にありがとう。もう、全てにありがとうと言いたい気持ちでいっぱいだった。
ボツワナの魅力はチョベ国立公園の動物たちだけではなかった。そこに暮らす人々もまた、とても魅力的で、私の心をわしづかみにしてくれた。地元の人たちと触れ合う機会はなかったけれど、ホテルのスタッフや、国立公園までの通りで見かけた人々はみな、フレンドリーでとても愛らしかった。愛すべきボツワナの人たち!!大げさだが、本当にそう思った。1泊だけなんてもったいない!絶対にまた来たい!!
感動だけでは終わらない、南アフリカの今を考えさせられる場所を訪れた。ヨハネスブルグにある、南アフリカ最大の黒人居住区、ソウェトだ。ソウェトの中でも裕福な家庭もあり、立派な家も多い。しかしその一方で、マッチ箱みたいな粗末な家が至る所でひしめき合っている。ソウェトの中でも貧富の差があるのだ。それでも人々の笑顔は明るい。 その笑顔に少し救われたような気がした。スケジュールの都合で、ソウェト地区をゆっくり見て回ることはできなかったが、立派な建物が並ぶ町とのギャップが与える衝撃は大きかった。南アフリカと言えば誰もが思い浮かべるであろう、「アパルトヘイト(人種隔離政策)」。制度自体は廃止されても、この問題が解決されるのにはまだまだ時間がかかるのだろう。でもきっと、ここに住む人は皆、南アフリカはこれからどんどん良くなっていく、自分たちの生活もきっと良くなるという希望を持って生きているんじゃないだろうか。だからこんな素敵な笑顔を見せてくれるのだろうと思った。この人たちの生活が一日でも早く良くなりますように、私には何もできないけれど、そう願わずにはいられなかった。
今回の旅行は、毎日飛行機移動があるという、とてもハードなスケジュールだった。実は私は耳が弱く、着陸のときいつも涙が出るぐらい痛い思いをするので、飛行機に乗るのはあまり好きではない。だから今回の日程表を見たとき、わくわくする!という期待よりも、大丈夫かな・・という不安の方が大きかった。その不安どおり、毎日耳の痛さに悩まされたが、そんなこと忘れてしまうぐらい、いろんな刺激や感動を今回の旅は与えてくれた。
こんなに近くで黒人の人たちを見たのは初めてだったので、そのかっこよさにいつも見とれてしまっていた。男の人も女の人も、手足がスラッと伸びて頭がとても小さくて、立っているだけですごくかっこいい。太っちょのおばちゃんは、お尻が大きくて、愛嬌たっぷりでとてもかわいい。子どもたちは目がくりくりしていて、すごくすごくかわいい。道端でよく見かけた、歌やダンスもとてもステキだった。8日間という短い期間の中でも、南部アフリカの国々は、十分にその魅力を教えてくれた。それでも今回の旅行は入門編。特に南アフリカは、きっと知れば知るほど奥が深く、魅力的な国なんだろうと思う。日本からはまだまだ遠い国だというイメージもあるし、実際そう簡単に行ける所でもない。でも、今回私が味わったような感動を、たくさんの人たちに知ってもらいたい。そしてもちろん私自身も、もっともっと、南部アフリカの魅力を知りたいと思う。
最後に、南アフリカ政府観光局の方々、南アフリカ航空の方々、キャセイパシフィック航空の方々、現地旅行社の皆様には大変なご配慮をいただき、この場をお借りしてお礼申し上げます。またご一緒させていただいた皆様にも大変お世話になり、有難うございました。大変勉強になり、そして何よりも楽しく過ごすことができ、素敵な旅の思い出ができました。本当に有難うございました。
岡部 聖子
2004年5月