初めての南部アフリカ─今回は10日間で南アフリカ、ジンバブエ、ボツワナ、スワジランド、ナミビアの5カ国を周る強行軍。 その中でもひときわ楽しみにしていたのが南アフリカのダーバンを2泊3日かけて走る、超豪華列車ロボストレインだ。
ロボストレインとは
ロボストレインとは世界一との呼び声も高い最高級列車。
1986年ROHAN VOSという人によって誕生し、彼の名にちなんでロボスレイルと名づけられた。
クラシカルな外見を持ちながら客室にはシャワー、トイレ、洗面台はもちろんの事冷蔵庫、空調設備、セーフティーボックス、スリッパ、バスローブなどまでありの完璧な設備を備えている。
運行ルートはいくつかあり、プレトリア〜ケープタウンの48時間1600Kmを走るルートをはじめとして長いものはケープタウンからタンザニアのダラエスサラムまで13日間6100Kmをひた走るロングルートまである。
それぞれのルートは途中いくつかの観光ポイントに立ち寄り下車してサファリを楽しんだりツアーが催される。
朝・昼はカジュアルな服装でOKだけれど夕食時は男性はネクタイ・ジャケット、女性はドレスやワンピースなどフォーマルな装いが求められる。
ネームバリューとしてはロボストレイン同様豪華列車のブルートレインの方が日本では有名かもしれないが、ロボストレインのほうが質がいいとの意見も多い。
というのはブルートレインはいわゆる国鉄なのに対しロボストレインは私鉄なのでサービスがいいという意見。
具体的な違いとしては、例えばブルートレインは日中部屋のベッドがソファーに戻されるのに対しロボストレインはずっとベッドのままなので昼間でも好きなときに横になれる点や、ブルートレインは食事の際乗客を2回に分けて入れ替わりに食事をとるのに対しロボストレインは人数によって2車両の食堂車をつけれるので一度に全員食事をとる。
料金はルートによってまちまちだが今回の2泊3日のルートで十数万円と値段も一流。
ただしこれには途中のイベントの代金、全ての食事、飲み物、軽食類の代金も含まれていて例えば部屋のミニバーが足りなくなったときは好きなものを好きなだけ持ってきてくれる。
とにかくすごい列車なのだという事を分かったところで、いざ豪華列車のたびへ!
出発
プレトリアの市内から車で走る事十数分、ロボストレイン専用出発駅に到着。
『専用』ってどういうことかというとロボストレインのみ発着するプライベート駅があるのだ。
スタッフの暖かい笑顔に迎えられ駅の中に入るとソファがずらっと並んだ広い待合室になっている。
内装はクラシックでロボスレイルに関連した資料が展示してあり、シャンパンやコーヒーを飲みながらそれを眺めているとロボストレインがホームに姿を見せた。
さすがの貫禄、みんないっせいに外に出てそれぞれ感嘆の声をあげあちこちから眺めていた。
乗客がそろったところでセールスマネージャーから挨拶がある。
お客さんはドイツをはじめとするヨーロッパ人とアメリカ人が多く、アジアからのお客は私たちだけだった。
客室に入り荷物をといて一息ついているとあっという間に昼食になった。
スモークチキンのサラダ、ローストフィレまたは温野菜のサラダ、フルーツのムース、コーヒーまたは紅茶というメニュー。
味もよかったけれど飾り付けも美しく、食事の間にも飲み物は足りているか、味は問題ないかと常にスタッフが気を配ってくれる。
食べ終わってみるともう夕食まで何も予定がない。
部屋でのんびりするのもよし、最後尾の展望車で流れる景色を眺めるのもよし、何もしない贅沢というやつである。
夕食の時間になるとさっきと打って変わってみんなきちんとした服装に着替えてくる。
胸の開いたシースルーのロングドレスを着ている人もいればそれドレスアップっていえないんじゃないのという感じのスパッツ姿の女性もいたりして、想像していたよりも堅苦しい感じはなかった。
ディナー自体はとてもおいしかったのだけれど、さっきの昼食から要は何もしてないわけでおなかがすいているわけもなく、さらにセールスマネージャーが私たちの席に同席したのでなんとなく緊張して食べきれなかった。
2日目 スワジランドへ
鈴の音で目がさめる。朝食の準備ができた事を客室乗務員が知らせてくれるのだ。
昨日結局遅くまで展望車で話し込んでしまったのでまだ眠い。
窓の外を見ると薄暗く、少し雨が降っていた。午後からゲームサファリがあるのでそれまでにやんでくれる事を期待する。
軽くシャワーを浴びて食堂車へでかけるともうほとんどの人が食べ終わった後でガラガラだった。朝食はハムやスモークサーモンなどの冷菜、シリアルやヨーグルトがブッフェ形式になっていて温かい卵料理などは数種類の中からチョイスしその都度作ってくれる。
メニューにもない組み合わせでも希望に応じて調理してくれた。
半分寝ている状態の私に対してもスタッフはきびきび働いてくれ、申し訳なくなるほどだ。
以前は2日目の朝に南アフリカを代表する動物保護区のクルーガー国立公園のモーニングサファリを入れていたそうだが、3日目の早朝にもサファリがあり2日間連続で早朝起きるのが乗客の負担になる事から少し前から取りやめているそうだ。
朝食を終え部屋で休んでいるといつの間にかスワジランドへ入国していたようだ。
スワジランドは南アフリカの右端に寄り添うような位置にあり今回のルートはプレトリアから右にカーブを描きながらダーバンへ入るのでスワジランドへいったん入国する事になる。入国といっても面倒な手続きはいらずロボスに乗車する前にパスポートを預けてEDカードを書くだけであとは全部スタッフがやってくれる。
ほとんど空腹を感じないまま昼食をつまみ(寝坊して遅い朝食をとった私が悪いのだけど)
、午後からスワジランドのムカヤでのゲームサファリに出かける。
ムカヤ私営動物保護区には主に黒サイ、白サイ、象、バッファローなどが生息している。ちょうどよく雨も上がってくれ5〜6人づつ車に分かれロボスのスタッフに見送られて、出発!
私はいわゆるゲームサファリというものを体験するのは今回の旅行が初めてだったけれど、このムカヤ私営動物保護区はかなりワイルドで車に乗っているだけでも楽しかった。
なにしろ集中して前を見ていないとトゲのある木がバサバサ顔に当たってくるのだ。もちろんレンジャーと呼ばれるドライバー兼ガイドさんが十分に気をつけて運転してくれるのだけど、頭を下げたりよこにそらしたり乗ってるだけでも忙しい。木が倒れていて道をふさいで通れなくなっているところがあるとレンジャーさんたちが数人がかりで木をどけてとおれるようにしてくれる。
そんなこんなでやっと保護区内に入ると早速象のグループを見つける。大人の象の横にはちっちゃな子象が鼻をブンブン振り回して「ボク強いんだぞー」とばかりに走り回っている。とにかくこんなに近づいていいのというほど動物の近くに寄ってくれる。
子供が一緒なので親の象も神経を尖らしているのか近づきすぎるとやさしい目をしているはずの象さんがむふーと鼻息荒くこちらに向かってきてこれまた迫力満点だった。
他にも20〜30頭くらいのバッファローの群れや、母親同士がけんかしている黒サイやらこっちに来るまで存在そのものを知らなかったしかの大きい版のクドゥなど、たくさんの動物が見られた。
途中雨がぽつぽつ降ってきたけどきちんとしたレインコートが用意されていたのでさほど濡れなかった。
3時間ほどのサファリを終えるとそのままムカヤゲームロッジというところへ向かい、ボマディナーとなる。
ボマディナーはバーベキューデラックス版みたいなもので、要はオープンエアでロウソクなどの明かりの中で晩餐という感じだ。
さっき見てきたインパラのソテーなどもあったりして食べてみるとあっさりしていて臭みもなく野生動物の一番の食料になっているというのも妙に納得がいった。
夕食を終えてロボスに戻るのにまた車に乗るのだが、街灯などもちろん何もないので真っ暗な中車のライトだけで走るのがまたスリルがあって楽しい。
さっと動物が横切ったりしてさながらナイトサファリ。
天気がいまいちで空が曇っており、星があまり見えなかったのが残念だ。晴れていたらそれこそ無数の星が見えたことだろう。
ロボスに戻るとスタッフがシャンパンとジュースで迎えてくれた。こういう時お酒が弱いのが本当に残念。
部屋に戻るとちゃんとベッドメイクがされていて、枕もとにはチョコレートが添えられていた。
明日は5:00起きでゲームサファリ。起きれるかがちょっと心配。
3日目 ダーバンへ
昨夜のうちにスワジランドを出国し、南アフリカへ再入国していた。
スタッフが1部屋1部屋ノックをして起こしてくれた。
寝ぼけ眼で車へ乗り、シュルシュルエ動物保護区へ出かける。
朝なので寒い。寒いだろうと思って着てきたウィンドブレーカーを着てもまだ寒い。
ぶるぶる震えながらも朝の澄んだ空気の中サファリカーで風を切るように走れば気持ちがい。
シュルシュルエ動物保護区は起伏の多い、丘のサファリといった感じだ。主に象やシキリン、シマウマ、イボイノシシなどが生息しているという。
動物を眺めながら緩やかな坂を登りきると、丘の上にある『ヒルトップ』というホテルで休憩だ。
その名の通り丘の上に建つホテルで眺めが抜群にいい!
ここで宿泊客に混じってコーヒーとマフィンで軽い朝食が取れる。
冷えきった体に温かいコーヒーがしみわたって解凍されていく感じがした。
ロボスに戻ってブランチをとる。
あと数時間でダーバンに着き、2泊3日の列車の旅も終わりだ。
バックパッカー派の私がこんな高級列車に乗ることがあるなんて夢にも思わなかったけれど貴重な体験が出来た。
随分駆け足でまわったので今度はゆっくりアフリカを周遊したいと思う。
岡坂 美紗子
2004年3月