誰しも人生で初めて訪れた国というのは、少なからず思考や行動に影響を与えていたり、強く印象に残っていたりするのではないだろうか。
私にとってのそれは、東南アジアに位置する、微笑みの国「タイ」であった。
今回旅先に選んだのはタイ北部のチェンマイ。チェンマイへ行くのは始めてだが、古都の印象が強いチェンマイで、今回は少数民族「リス族」の村、そしてHIV孤児の宿泊施設「バーンロムサイ」を訪問することにした。
リス族の村へはこんな車が迎えに来てくれる。
チェンマイから車で1時間と少し、この日の宿泊施設である「リスロッジ」に到着。
リスロッジはリス族の村の中にあり、従業員は地元のリス族やアカ族など少数民族の人々である。宿泊施設は現在、4棟があり、1棟あたり6部屋がある。
部屋の入り口はこのように開放的になっている。
ベッドルームはこのようになっている。
外には開放的な雰囲気のバーがある。
リスロッジでのチェックインを済ませると、早速アドベンチャープランのスタート。まずは自転車に乗ってリス族の村を走る。
少しアップダウンがあるものの、山や田畑に囲まれた道を走るのはとても爽快である。ちょうど花の収穫時期のため、忙しそうな姿も。
自転車から車に乗り換え、険しい山道を進むと、象のりのポイントに到着する。象に乗る体験は、タイでも他の都市でたくさんできるのだが、ここの象のりは少し違う。このようにスタート。
そう、ここでの象のりでは、象使いは一緒に乗らない。自分たちだけで象に乗るのだ。象は本当に賢く、象使いが乗っていなくてもゆっくり、まっすぐに歩いてくれる。この迫力はなんともいえない。
尚、象使いは横を一緒に歩いてくれるのでご安心を。
象のりのあとはラフティング。このあたりは穏やかに見えるが、結構急な川を下る。
ラフティングが終わると、待ちに待った昼食。この日の昼食はリスロッジのお弁当。
なんと、こんなにかわいいボックスに入っている。
中を開けると、バナナの皮でくるんであるのが見える。
それぞれ開けるとこのようになっている。
このご飯がどれも本当においしい。タイの食事は辛いものが多いというイメージもあるが、チェンマイやこのあたりの食事は辛くなく、日本人の口にはとても合う。
午後、時間があったので、アドベンチャープランには入っていないが、首長族の村を訪問させてもらった。
首長族の村は、とても有名になり観光客が多く訪れるため、現在は村に入るのにチケットを購入することになっている。
村に入るのにチケットを購入する、なんて少し違和感を感じるが、これで写真撮影は自由にできる。
首長族の村には、たくさんの土産物屋が並ぶ。
これらは村の女性たちが織ったものがほとんどである。
日中、男性たちは働きに出ていていないため、村には女性と子どもだけである。首につけている金の首輪は、実際に持ってみるととても重い。
女の子は8歳から首輪をつけ始め、4年ごとに少しずつ増やしていくという。
この子は20歳。今月出産予定だそうだ。笑顔がとってもかわいい。
こちらはこの日出会った中で最も首の長かったお母さん。
聞くと寝るときも首輪をつけたままだそうだ。
首長族の村をあとにし、アカ族の村へ向かった。このあたりは少数民族がたくさん存在し、言語も服装も文化も異なるが、子どもたちは同じ学校に通ったり、同じところで働いたりしている。
アカ族の村へ向かったのはシャーマンに会うためであった。シャーマンは各コミュニティ(村・集落等)に一人存在する。シャーマンの家庭は、子どもが継ぐことになっており、代々シャーマンが続く。シャーマンといっても日本では馴染みがないが、医師とも祈祷師ともたとえられるが、人々は病気になったらシャーマンに診てもらい、怪我をすれば薬をもらう、結婚をしようと思えば相手との相性をみてもらい、家を建てるタイミングはシャーマンに相談し、遠出しなければならないならば、問題がないかをシャーマンに聞く。結婚式では幸せを願い、誰かが亡くなったならば祈りを捧げる。つまり、シャーマンはそのコミュニティにとって、なくてはならない存在なのだ。
さて、そんなシャーマンの家がこちらである。
シャーマンの奥さん。
お茶とバナナをいただき、少し奥さんと話す。しばらく待ったがシャーマンは現れなかった。聞けばシャーマンは外出しているとのこと。非常に残念ではあったが、仕方ない。シャーマンは村に一人、いつもとても忙しいのだ。だからこそ、次回はぜひ会ってみたい。
リスロッジでの夕食は地元の伝統料理。
各ハウスごとに部屋でいただくことになっている。少しスパイスのきいたものもあるが、ほとんどの味付けは濃すぎず、日本人にはちょうど良いものであった。
夕食後、現地の子どもたちが踊りを披露しに来てくれた。
村の子どもたちが毎日交代で来てくれるそうだ。
こちらが今回、私たちのロッジを担当してくれた女の子たち。
左の女の子は、夜に一人で星を眺めていると、走って駆け寄ってきてくれた。皆、明るくかわいらしく、とても気持ちよく過ごせた。
このリスロッジへの滞在プランは基本的には1泊2日がメインだが、もっと長く、ゆっくり滞在するのも良いと思えるようなロッジであった。
リスロッジからチェンマイへ戻り1泊した後、訪れたのはチェンマイから車で約1時間、ハンドンという地域のナンプレー村という村である。この小さな村を訪れた目的は「バーンロムサイ」を訪問するためであった。
「バーンロムサイ」はタイ語でガジュマルの木の下の家という意味である。施設の真ん中に大きなガジュマルの木がある。
ここはHIV孤児のための生活施設となっている。現在、この施設には1-18歳までの30名の子どもたちが生活している。HIV孤児というのは、両親がHIVに感染し、エイズを発症し死亡、または子育てができない状況にあり孤児となっている子どもたちのうち、自らも母子感染している子どもたちである。以前は母子感染して誕生した子どもの寿命は5年と言われていたが、現在は適切な治療を受けることでエイズの発症を防ぎ、成長することができる。また、現在の医学では出産も可能だそうだ。
広い敷地にはこのような施設がある。
☆ ライブラリー
→一階にはミーティングルーム、2階には図書館とコンピュータルームがあり、地元の子どもたちにも解放されている。この施設がバーンロムサイと地域コミュニティとのつながりにもなっている。
☆ 薬の保管室
→バーンロムサイの子どもたちは、1日2回、必ず決まった時間に薬を飲まなければならない。その薬を保管し、分ける大切な部屋。
☆ 女の子と幼児の宿舎
→寝食の場所。年頃の女の子は料理も楽しむ。
☆ 縫製場
→バーンロムサイでは、寄付だけに頼らず、自分たちで製品を作り、販売することにより収入を得ている。また、村の女性やHIVに感染した女性の雇用の場としても機能している。いずれはバーンロムサイを出た子どもたちの就職の場にもなるよう考えられている。
☆ アトリエ
→アート活動が子どもの免疫を高める効果があるため、作られた施設である。
バーンロムサイと併設して、「ほしはなヴィレッジ」というゲストハウスがある。ここでの宿泊はバーンロムサイへの支援にもつながる。
このゲストハウスは、長く滞在したくなるほど、雰囲気が良い。まずはプール。
ここは映画「プール」の撮影にも使用されたプールである。プールも子どもの免疫を高める効果があるとされているが、プールの青と周りの緑が美しく、プールサイドでのんびり過ごすのもおすすめである。
客室はこんな感じ。
4つのコテージはそれぞれ異なる特色を持っている。キッチンのついている部屋なら、近くのハンドン市場で食材を買ってきて作ることも可能。有料で食事やスチームサウナ、マッサージなどを利用することも可能だ。
時間があれば自転車で町を走ってみるのも面白い。チェンマイは確かに面白い。ただ、1日や2日、何もプランを決めずにこんな田舎でゆっくり過ごすのも、心の栄養になるのではないだろうか。
タイを発つとき、自然と涙がこぼれた。やっぱりタイは私にとって大切な国。
また戻ってこよう、そう心に誓った。
2012年9月 西田